APICの留学生たちが広島にて国内研修

本研修は、留学生が日本社会を「知識として学ぶ」のではなく、「現地で体験し、考え、対話する」ことを通じて理解を深めることを目的としています。特に今回の広島訪問では、歴史・文化・産業、平和、そして芸術に関する学びを通じて、日本社会への理解を一層深めることを意図しました。また、研修を通じた学習に加え、共同生活や移動・食事の機会を通じて、学生同士の相互理解や交流を促すことも重要な目的としています。
1日目:1月29日(木)
初日は、早朝に東京都内を出発し、広島県への移動および文化・歴史研修を実施しました。参加学生のうちザビエル留学生のクレイトンさんおよびUWI留学生のショネルさんにとっては初めての新幹線乗車であり、日本の高速鉄道システムに触れる機会となりました。


広島は強風で非常に寒い気候でしたが、移動中のフェリーは多くの学生にとって初めての体験であり、写真や動画を撮影するなど、終始楽しんでいる様子が見られました。なお、MCT留学生のルークさんは過去に一度広島を訪れた経験があり、当時を懐かしむ発言もありました。
宮島では、世界文化遺産である厳島神社および宝物館を拝観し、大鳥居を見学しました。学生全員が初めて鹿を間近に見て、大きな驚きと関心を示していました。厳島神社では、偶然神事のお祓いが行われており、日本の宗教儀礼を実際に見聞きする貴重な機会となりました。


宝物館では、古い装束や大鳥居改修時の建築図面などに強い関心を示し、「鳥居の名称の由来」や「神社・鳥居の建立場所の決め方」など、多くの質問が寄せられました。また、ミクロネシア連邦出身のルークさんからは、自国においても鳥居に類似した門状の構造物は存在するものの、日本の神社のような宗教施設は存在しないことに触れながら、鳥居が持つ意味や役割について質問がありました。学生たちは、鳥居が聖域と日常空間を区切る象徴的な存在であることや、日本の信仰と建築の関係性について理解を深め、宗教建築を通じた比較文化的な学びにつながりました。
夕食は広島市内の老舗お好み焼き店「みっちゃん本店」にて、広島風お好み焼きをいただきました。学生全員が完食し、日本の地域食文化に対する理解を深める機会となりました。ショネルさんは過去に大阪でお好み焼きを食べた経験があり、地域ごとの違いについて感想を述べていました。
2日目:1月30日(金)
2日目は、広島県内の企業・産業施設を訪問し、日本のものづくり産業および環境配慮型技術について学びました。
午前中は、三建産業株式会社を訪問しました。同社は、工業炉の企画・設計・施工・メンテナンスを一貫して行うプラントメーカーであり、日本国内のみならず世界30か国以上にパートナーを有する企業です。当日は、社長による挨拶および会社概要の説明の後、ヘルメットおよび白衣を着用し、工場および新設された研究施設を見学しました。自動車部品や電子部品、発電所設備、船舶部品など、幅広い分野で使用される金属部品の製造工程において、工業炉が果たす役割について具体的な説明を受け、学生たちは日本の産業基盤を支える技術への理解を深めました。
また、国際宇宙ロケットH-IIBの製造にも同社の工業炉が関わっているとの説明があり、日本の高度な技術力が宇宙開発分野にも活用されている点に、学生たちは強い関心を示していました。さらに、同社が環境問題への責任を重く受け止め、2030年までに自社製工業炉からのCO₂排出量を50%削減する目標を掲げていることや、電気・水素・アンモニア燃料を活用した脱炭素型工業炉の研究開発に取り組んでいることについて説明がありました。研究施設では、実際の実験設備や開発中の工業炉を見学し、技術革新と環境配慮の両立について学ぶ機会となりました。
質疑応答では、工業炉の導入形態やCO₂排出量に関する具体的な質問が寄せられました。特に、環境分野や工学分野を専攻する大学院生に加え、工学部グリーンサイエンスコースに所属する学部生2名からは、将来的なインターンシップへの関心が示されるなど、学術的および職業的視点から活発な意見交換が行われました。見学後は、社内食堂にて昼食をいただき、日本の企業文化や職場環境にも触れる機会となりました。

また、マツダ本社ロビーでバスを待つ間には、展示されている車両に実際に乗り込み、写真撮影を楽しむ学生の姿が見られ、日本の自動車産業をより身近に感じる機会となりました。


3日目:1月31日(土)
最終日は、広島市内にて平和学習および文化・芸術鑑賞を行いました。
午前中は平和記念資料館を訪問し、英語音声ガイドを用いて、原爆投下に至る経緯、被害の実態、被爆後の復興の歩みについて学びました。学生たちは約1時間半にわたり各自で展示を見学し、被爆者の証言や遺品、写真資料を通じて、戦争の悲惨さと平和の尊さについて深く考える機会となりました。中には、展示内容に強い衝撃を受け、時間をかけて丁寧に見学する学生の姿も見られました。


資料館見学後は、平和記念公園へ移動し、原爆犠牲者慰霊碑の前で黙祷を捧げました。その後、原爆ドームを訪れ、被爆の実相を実際の建造物を通して学び、平和について改めて考える時間を持ちました。


午後は、ひろしま美術館を訪問しました。当日は特別展「白の魔法 ―モネ、大観も使った最強の色―」が開催されており、西洋画や日本画など多様な作品を通じて、絵画表現における「白」の役割や芸術的手法について学びました。特にクロード・モネの作品では、光や色彩の重なりによって表現される繊細な描写に、学生たちは強い関心を示していました。展示解説は日本語のみであったため、英語話者の学生に対しては同行職員が適宜通訳を行い、内容理解を補いながら鑑賞を進めました。

研修全体を通じての成果
本視察は、学生にとって平和について深く考える機会であると同時に、東京から離れた地域を訪れ、世界遺産を含む観光名所や日本の文化・芸術に触れる貴重な体験となりました。
それに加え、本旅行は学外での共同生活を通じた交流の機会としても大きな意義がありました。昼食時には、同じ地域出身でありながら島ごとに異なる食文化について話し合う様子が見られたほか、バルバドス出身の学生を交えて、それぞれの国や地域の文化の違いについて意見を交わす場面もありました。また、夜には宿泊先の部屋でカードゲームを楽しむなど、学生同士が自然に交流を深める機会となりました。
普段の寮生活では、男女別の居住環境や居室階の違いにより、学生同士がゆっくりと交流する機会が限られており、本旅行を通じて初めて言葉を交わす学生もいました。そのような背景からも、本視察は学生同士の相互理解を深め、関係性を築くうえで非常に有意義な機会となりました。
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