一般財団法人 国際協力推進協会
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APIC学生インターン制度

 APICは、グローバル人材育成の一環として国際協力の現場で問題解決能力を高めるために、長期と短期、2種類のインターン制度を設けています。インターン生は、来日の外国要人のアテンド、開発プロジェクトの企画、講演会の準備、APIC会報の編集などの業務を通して、資質能力の向上に努めています。

 グローバルに活躍する人材とは、次の3点が求められています。
① 豊かな教養
② コミュニケーション能力(日本語及び外国語)
③ 問題解決能力

 APICにおいては、上記③の「問題解決能力」について、実際の国際協力の場において、かなり厳しい能力付加トレーニングを行います。具体的には、来日の外国要人のアテンド、APICカントリー早朝講演会、太平洋やカリブの開発支援プロジェクト、ザビエル留学生支援事業、APICホームページの整備、APIC会報発行の準備などに従事します。

 長期インターン生の受け入れは、一般社団法人日本学生会議所(UNISC)との協力によるものです。これまでに、成蹊大学、慶応義塾大学、学習院大学、津田塾大学の学生が活躍してきました。現在では、早稲田大学、国際基督教大学の学生が年間を通してインターン生として業務を行っています。



 短期インターン生の受け入れは上智大学との「教育連携に係る包括的な協定(Memorandum of Understanding:MoU)」に基づき実施されています。学生の休業期間を利用して集中的な学びを提供する本プログラムは2015年の夏季から開始され、今夏は上智大学から2名の学生が約1か月の間、APICにて業務に携わっています。
 

APICインターン体験記
~上智大学 文学部 英文学科 2年 高根美幸~



 三年生の中島先輩に引き続き、「上智大学インターンシップ科目 国際協力の現状と課題」第一期生として国際協力推進協会で20日間、様々な実務を経験させていただいた。

 以下では1.日々の業務内容、2.特に印象に残っているタスク(カリブ交流大使島内大使との対談・雪ヶ谷化学工業顧問坂本氏宅訪問・外務副大臣城内氏による早朝講演会)、3.今回のインターンシップを通じて学んだこと(APICにおける国際協力の在り方・大学での学びと国際協力との繋がり・社会で働くということ)の三点についてまとめたい。



1.日々の業務について


①「ニュースレター」の作成

1  APICで毎日行う業務の一つに「ニュースレター」の作成がある。これは、太平洋諸国とカリブ地域について興味のある最新ニュースをインターネット上から探し出し、その要点と自分の所感をまとめるというものだ。私はこのタスクを通して、新しい情報を得るために毎日アンテナを張っておくことの大切さを実感した。同時に、日本でこれらの地域に関する情報の流通量が少ないこと、つまり、日本人がこの素晴らしい地域について知る機会が少ないことを非常に残念に思った。

 毎日ニュースに触れることで、これらの地域で今何が問題となっているのか、人々がどのような思いを抱いて生活をしているのか、といった最新の動きを知ることができた。国際協力を行う人々にとって、このようなタスクを怠らないことは非常に大切だろう。お互いの国についての理解を深め、より円滑なコミュニケーションを図るきっかけになると思うからだ。実際にこの業務を始める前は、太平洋諸国やカリブ地域についての知識は私にほとんどなかった。しかし、毎日少しずつニュースを見ることで以前までは知りえなかった知識を多く蓄えることができた。この地域を見る目も変わり、視野が広がった。

 具体的に振り返ってみると、熱帯暴風雨によるドミニカ共和国への洪水被害や日照りの影響によるジャマイカ都市部の水不足危機といった、自然災害に関するニュースを目にすることが多かった。前者の被害に対しては、イギリスやアメリカ政府が復興のための人道的支援実施を即断したということだったが、これこそ「国際協力」であると実感した。同時に、この二国の隣に早く日本が並べばいいなと思った。しかし、今振り返ると国によって「国際協力」のやり方は様々であってもいいではないかと思う。むしろその方が、相手国の細やかなニーズに答えられるかもしれない。日本が島国であり、自然への脆弱性を抱える点で分かり合える部分も多くあるだろう。ここに、他国ではまねできず、日本にしかできない技術協力・支援の仕方が存在する。このことを忘れてはいけないと思う。

 また、大学の講義とリンクし、その学びをさらに深めてくれるニュースもあった。それは、中国のアジア太平洋地域への海洋進出を受けて米国がその海事セキュリティ戦略に、「グアムの近代化(つまり、攻撃型潜水艦や無人偵察機などをグアムに導入すること)」の取り入れを決定したというものだ。「現代国際関係論」という講義では、時間をかけて中国の経済、軍事的動きについて学んだ。アジア・太平洋地域諸国の意思に反して中国が土地の埋め立て等を行うことを受け、被害国はアメリカに助けを求めていたことまでは知っていた。この記事を通して、アメリカの具体的かつ最新の動きを知ることができて良かった。これからもこのように広く、長くアンテナを張り続け、履修後こそ講義での学びを深めていきたい。

 この地域の素晴らしい文化を伝える記事にも多く出会った。「マサラトン文化フェスティバル」やカリブ文化の祭典「ノッティングヒル・カーニバル」などの地域独特のイベント、更に金メダルを何個も獲得するジャマイカ出身のウサイン・ボルト選手についてなど等。しかし、いつも残念に思っていたのがこれらの最新ニュースは日本語で検索してもほとんど見つからず、英文記事しかないことだった。これでは太平洋・カリブ地域の魅力を世界中に十分に発信できないと思った。多言語に翻訳されたサイトが増えたり、日本のメディアが積極的にこの地域についてのニュースを取り上げたりするようになってほしい。


②アポイントメント調整・ミーティング

 ほかには、理事長のアポイントメント調節という秘書の業務も体験した。ビジネス用のフォーマルなメールを書くことは初めてであった。ここでは、理事長に貴重なアドバイスを頂いた。それは、「APICという一つの組織の一員として働いているため、上司・同僚とcommunicateしながら仕事を処理していくことが大切であり、これはどこへ行っても必要であること」や、「与えられた仕事はメールのCCのみに頼らず、自分の口で報告すること」であった。社会に出てもずっと心に刻んでおこうと思う。

 さらに、毎週月曜日のお昼のミーティングや決算理事会に参加させていただいた際には、「収支相償の原則」について理解を深めることができた。これは、営利を目的としない慈善等の公共事業を行う公益法人が、それらの事業を行う際に必要な費用を収入以上としなければならないというものだ。APICは「一般財団法人」として国際協力事業を行っている。この立場で国際協力に関する実務をこなしていく際の難しい点や苦労する点について、リアルな面を知ることができて良かった。これは、インターン生として働いたことでしか学べなかったことであろう。


③「APIC会報誌」製作

 また、APICのPR活動の一環として、機関紙「APIC会報誌」製作を通じたネットワーク拡大活動にも携わった。私は記事を三本執筆させていただいたが、特に「雪ヶ谷化学工業顧問坂本氏宅訪問」記事作成は印象に残っている。というのも、この記事を書くことが非常に大切な意義を持つものだと感じたためだ。

 坂本氏はミクロネシア地域への支援を以前から活発に行っておられる。今回は、APIC国際協力事業のひとつである「ザビエル高校奨学金」への多額のご寄付を頂き、その第2期奨学生であるRisa Oueさんが坂本氏宅へご挨拶に伺った。これに同行したときの様子を記事にまとめた。対談中、坂本氏からは「いつ日本に到着したのですか」、「東京で観光はしましたか」、「日本にはもう慣れましたか」など、Risaさんを気遣う言葉が多数聞かれた。また、別れ際に坂本氏は、「またぜひここを訪れて元気な姿を見せに来てほしい」とおっしゃっていた。

 このような、APICの事業に賛同して下さる多くの方々の寄付金によって、留学生の資金は賄われている。私が記事を書くことで、それを読んで下さる方々に対して日頃の協力への感謝の気持ちを表すとともに、近況の報告にもなることに気づいた。協力者の方々と長期的な関係を築くためにも、今回の執筆は大切な意味を持つ業務であると実感した。これこそが、「様々な現場の状況についての情報を提供する」という、APICが大切にしている「国際協力」を推進するための一つのプロセスだと思った。

2.印象に残るタスク


①カリブ交流担当大使である島内氏との対談

 インターンシップ第二週目に、カリブ交流担当大使である島内氏との対談を行った。お会いする前はとても緊張したが、実際にお会いすると、笑顔が素敵で気さくな方で私の質問にも快く答えてくださった。また、カリブ地域や外交について貴重なお話をされた。例えば、セントルシアは昔フランス領であったから食事が美味しい、カリブ地域の全体像を知るためにはこの本を読むと良い、等々。また、大学で学ばれたことで国際協力・外交といった面で役立っていることは何かあるか、とお聞きすると、「しっかり英語を学び、マスターすることは将来他の言語を学ぶ上での基礎となるから重要である」と教えていただいた。さらに、APICの素晴らしい点として、どんなに小さい国でも一国一国を大切にして交流し、事業を行っていることを挙げられた。なるほど、国際協力を行う際に国を道具にしたような―自国を支持する票が増える―などというような考え方しかしないのには私も違和感がある。人間関係と同じで、こちらの損得のみを考えた協力では、相手はそれを簡単に見破り、さっさとその場を離れて別の国に協力を求めることだろう。

 島内大使へのインタビューでは、ODAだけでなく両国の人的交流・文化交流によって互いの国の理解を深めることの重要性にも気づいた。というのも、それによって長期的な信頼関係が構築でき、国際協力をよりスムーズに推し進めることができると考えるからだ。具体的には、カリブ地域の水産センターで指導に当たるJICA派遣の日本人専門家の貢献がある。日本の無償協力資金によって、魚の水揚げから冷凍保存・販売・さらにはこれらの役割を担う人材の育成が活発に行われているという。ドミニカ共和国では、水産センターの一部として設置された防波堤がハリケーンの来襲時に全国の漁船が逃げ込める避難所という防災上重要な役割も果たしており、現地の関係者に感謝されているのだ。このようなところで、日本のノウハウが活かされていてJICA専門職員や青年海外協力隊が、技術移転や人材養成とともに、人的交流といった面で日本ならではの素晴らしい仕事をしていることは、カリブ地域の国造りに少なからず貢献していることを学んだ。


②雪ヶ谷化学工業顧問坂本氏宅訪問

 二つ目に挙げる印象に残った業務として、先ほども少し触れた、雪ヶ谷化学工業顧問坂本氏宅訪問がある。今回の訪問において学んだことは、政府が行う国際協力ともAPICのような財団法人が行うものとも違った「社会貢献」が存在することである。それは、「CSR」である。日本語では「企業の社会的責任」と訳される。これは、消費者や株主、取引先、地域社会といったその企業の利害関係者や社会全体に対して、環境や利益配分などの面で責任を果たすことを指す。雪ヶ谷化学工業株式会社は、グローバルに社会貢献活動を推進するため、CSRへの取り組みに力を入れている。例えば、「中国・教育支援活動」は、中国にある学校のない山奥の村の子どもたちが等しく教育を受けられる支援活動である。

 さらに、「未来ある子どもたちが教育を受けられるように」との思いでスタートした「ユキロン教育基金」は20年以上の歴史を持ち、毎年約20人の学生の就学を援助しているそうだ。また、上海工場創業10周年の記念事業として、中国に小学校を設立したという。雪ヶ谷化学工業株式会社の他にも、インターネット上で「CSR」と検索すると、CSR活動の一環として海外と深いつながりを持った「国際協力」事業を行う企業がたくさん見つかった。このように、その企業の特色を生かした独自の活動が、私の知らないところで無数になされていることに驚いた。そして、「国際協力」へのアプローチの方法だけでなく、「国際協力」に携わる側にも多様な形・種類が存在するのだと学んだ。


③外務副大臣の城内実氏による早朝講演会

 インターン最終日前日、ホテルオークラ東京で行われた「第317回カントリー情報早朝講演会」に参加した。「日本外交の課題と展望」という演題の下、外務省外務副大臣の城内実氏のお話を拝聴した。西ドイツでの幼少時の生活経験から、外交官時代を経て現在の政治家活動に至るまでのエピソードは非常に興味深く、会場からは何度も笑いが起こっていた。その中で、自身の選挙活動での経験が外交にも生かされている点を強調された。具体的には、パフォーマンスではなくコツコツと誠実にやるべきことをこなしていくこと、また、気配りを大切にして相手との関係を長く「つなげていく」ことが、政治・外交の両場面で重要だという。木内氏のように、信念を持って生きていれば人生の中でのどのような経験も、どこかで繋がり役に立つ日が来るのだと思った。

 後半では安倍政権の掲げる「地球儀を俯瞰する外交」についても触れられ、同盟を結ぶ大国アメリカだけに頼るのではなく、小さい国も念頭に置いた「きめこまかい外交」を行っていくべきだと主張された。加えて、太平洋島嶼国はそれぞれの国が強い発言権を持っている点で重要な地域であるとの指摘もあった。これこそ、APICの理念と活動内容に合致するものだと感じた。前述の島内大使がおっしゃったように、APICは一つ一つの国に対して気配りをし、太平洋地域との国際協力に力を入れているからである。つまり、APICはこれからの日本外交をも引っ張っていく役割を担っているともいえるのではないだろうか。

3.今回学んだこと


①「ソフト・パワーとしてのAPIC」

 今回「一般財団法人 国際協力推進協会」において様々な実務をこなし、様々なバックグラウンドを持った方々と関わる中で、APIC独自の「国際協力」について知ることができた。特に私に新しい気付きを与えてくれたのが、常務理事からお聞きした「ソフト・パワー」という外交上の概念である。これは、軍事力や経済力といった数値などによって目に見える国家権力を指す「ハード・パワー」と対立し、その主要構成要素を一国が持つ独自の文化や政策が生み出す魅力だとする。

 普通多くの日本人は、「国際協力」というと「主権国家間」間で行われるものだと認識していると思う。私もこれまで授業で学んだ「国際協力」のアプローチ方法として、政府による「ODA」、他に挙げるならばJICAによる協力くらいしか知らなかった。しかし、前述の「ソフト・パワー」という概念を提唱したアメリカの国際政治学者ジョセフ・ナイによると、「主権国家」単位だけで考えるのはもはや時代遅れであるという。つまり、私たち国民一人ひとりが「国際協力」を推し進めるメンバーの一員であるべきだと主張するのだ。

 これを踏まえると、APICはこの「ソフト・パワー」を推し進めることに大きく貢献している組織のひとつであるといえる。なぜなら、APICの行う開発協力事業は、日本の文化や取り組みを太平洋・カリブ諸国に知ってもらうことを目的としているからだ。これこそ、先ほど述べた「ソフト・パワー」の考え方に合致している。具体的には、太平洋とカリブ地域における大学生招待計画や記者招待計画、我が国オピニオン・リーダーの派遣などが挙げられる。

 加えて、この概念によって他国に影響を与えていくには、長期的な視野を持つことが大切だと考える。「ハード・パワー」とは違い、武器・武力やお金といった物理的なものではなく、人々の間の信頼構築など心の交流をその中心に据えているのだ。これらは長い時間をかけて行われるべきものではないだろうか。その点で特に、「ザビエル高校留学生奨学金事業」を進めることは、日本との教育交流を将来にわたって展開することにつながると思った。なぜなら、この業務に少し携わった際、「日本の大学や社会で知識や技術を身につけて帰国した奨学生が、自国でそれらをどう生かし貢献・活躍するか、我々はそれをどうサポートしていくか」という長期的な考えがあることを知ったからだ。


②大学での学びと国際協力との繋がり

 専攻である「英文学」の魅力とそれを学ぶ意義を追究することは、少なくとも大学在学中の私のタスクの一つだ。インターンシップを始める前は、英文学を通して異文化圏の人々の考え方や価値観、宗教観、常識などに触れることで、異文化圏の人々とより深いコミュニケーションがとれるようになり、そして、それが円滑な国際協力につながると考えていた。

 今回のインターンシップでは、英文学と国際協力との繋がりについて考え続けたのだが、インターンシップも終わりに近づいた今、両者の共通点を見つけることができたと感じる。それは、「目に見える相手のちょっとした言動から、隠れた思いやニーズを敏感にくみ取ることが大切である」ということだ。

 約一年半、英文学を学んできて、実に様々な作品に触れた。文中で使われている英単語一語一語と丁寧に向き合うことで、そこに隠れたものを解き明かせるという経験を何度もした。その眼には見えないものの中には、著者自身の考え方や価値観、時代背景、生き方さえもが含まれる。さらに登場人物のセリフや行動描写などからは、彼らの心情、他の登場人物との関係を読み取れる。これらの発見は、一つの作品をより深く理解して味わう上で欠かせないと考える。

 一方で、「国際協力」に関わる様々な実務を通して、「相手の気持ちを汲み取りながら行動すること」の大切さを知った。協力する相手国の思い、資金を提供してくれる方々の思い、奨学生の思い、講演者の思い、同じ空間で仕事をする方の思い。表にははっきりと表れていなくても、相手のちょっとした動きからこれらを汲み取ろうと努め、臨機応変にこちらが行動することで、スムーズに「国際協力」を行えるのではないだろうか。英文学での学びを更に深めて、このように社会の中でも役立つ力を養いたい。そして、今回のインターンシップのように様々な経験を通して、英文学の魅力をもっと発見していきたい。


③社会で働くということ

 今まで学校の勉強に充てていた時間をずっと仕事に費やすことになるという感覚をぼんやりと掴んだとき、初めは戸惑った。このように長時間パソコンと向き合うことも初めてであったので、集中力をどう維持すればいいか分からなくなったときもあった。しかし、2、3週間もたつと体が慣れ、退勤時の疲れも和らいでいったように感じる。

 このように一日一日を何とか過ごしていく中で、スタッフの方々は私を気遣う温かい声を数多くかけてくれた。みなさんは笑顔が本当に素敵である。一瞬笑顔を見せるだけでその場が和み、温かい空気に包まれるのを何度も感じた。思いやりに満ちた職場だ。お互いに気持ちよく仕事ができる環境がここにはあると感じた。これが最終的には、この組織が「国際協力」の事業を成功させるための支えとなるのかもしれない。

 また、オフィスを飛び交う敬語の美しさにも驚いた。上司の方とのやりとり、来客や電話での応対の中でよどみなく使われる敬語が耳に入ってきたときは、さすが社会人であるなあ、と心から感銘を受けた。普段はこんなに敬語が飛び交う空間にいることがあまりないため、私にとって非常に新鮮だった。また、出勤・退勤時の挨拶や「ありがとうございます」というお礼の一言の大切さを知った。勤務中、コミュニケーションが長時間とれないからこそ、このような一言一言を大事にすることでお互いに心を通わせているのだと思った。一緒に働く人に対して、自分の口でcommunicateしていくこと、又、いわゆる「報告・連絡・相談」を常に心がけることは、ひとつの仕事をチームプレイでこなしていくのに不可欠だと実感した。一つの組織の一員として働くことの意味が少しわかった気がする。

 このような「社会人のマナー」習得のために私が今からできることは、場面に合わせて敬語を積極的に使うことはもちろん、笑顔を忘れないこと、思いやりの心をもって人と接することだと考える。特に、最後の二つは「men and women for others, with others」という、すべてに通じる素晴らしい理念を掲げる上智でのキャンパスライフにどっぷりつかることで養ってきいきたいと思う。



APICインターン体験記
~上智大学3年 中島小百合~



 8月4日から31日までの20日間、国際協力推進協会(APIC)でインターンを体験しました。上智大学ではグローバル教育の一環として「インターンシップ科目」があります。他方、APICと上智大学の間には教育連携の包括協定があり、インターン生を受け入れる取極めとなっています。(コラム参照)今回、私が上智大学からのインターン生の第一期生となりました。

 私は今回のインターンシップを通じて、①規律とマナーが必要であること、②人と人とのつながりが重要であること、③国際協力は実務の積み重ねであること-を学びました。

 また、将来、私はAPICが取り組んでいるような環境や教育分野における国際協力に携わっていきたいという思いが強くなりました。



上智大学インターンシップ科目

 なぜ、上智大学でインターンシップ科目を取ろうと思ったのか。それは、以前からインターンシップを通して「国際協力」に関係する組織で実務経験を行ってみたいという思いがあったからです。しかし、個人でそのようなインターンシップの機会を見つけることは容易ではありませんでした。例えば、4年生や大学院生で「開発」、「法律」、「国際関係」を履修している者、或は、英語と日本語が堪能な者といった条件があります。おそらく、これはインターンシップ受け入れ先で「即戦力」を求めているからだろうと思います。

 今回、上智大学で新設された「インターンシップ科目」では、インターンシップについて「実務経験を通じ、大学で学んだ専門知識や経験をグローバル社会の中でどう生かしていくか、あるいは自分が残りの大学生活で何を学ぶべきか、といった気づきを得る」ことを目標としていました。これこそ、自分が「国際協力」の分野で何ができるのか、何がしたいのかを考えるきっかけになると考えて応募した次第です。

 「インターンシップ科目」ではいくつかのインターン先がありました。私は、ホームページを通じて、APICが「ザビエル留学生奨学金制度」や「ミクロネシアチャレンジ」などの教育や環境面での国際協力・国際支援事業を行っていることを知り、また、上智大学とAPICが教育連携の包括協定を結んでいることを知り、インターン先としてAPICを希望しました。

インターンの日常生活

 20日間という短い期間でしたが、午前10時から午後5時まで (昼食は1時間)の平日5日のインターン生活は毎日充実したものでした。同時に、大学とは違う環境で、授業を受けるのと異なり一日中仕事をするペースにしばらくは慣れませんでした。だが、APICスタッフから仕事を教えて貰うだけではなく、外国勤務の経験やそこで培った生活のノウハウを聞くことができました。外務省担当課に同行させて貰うといった貴重な体験もしました。今まで自分が知らなかった太平洋諸島地域やカリブ地域についても多くを学びました。

 インターン生のルーティンとしては、「ニュースレター」と呼ばれる報告書 - 太平洋島嶼国地域とカリブ地域の時事ニュースをインターネットで探し、その記事をまとめる報告書を作成する仕事に取り組みました。

 インターン生の主なタスクとしては、APIC会報の原稿作成がありました。APIC会報第一号(創刊号)は本年7月に発行、続く第二号は来年1月の発行予定でした。編集長は、APICで一番若い理事の芳賀達也さん、編集は私を含めてAPICインターン生が担当します。私が執筆を指示されたのは、本年7月に来日したミクロネシア連邦前大統領エマニュエル・モリ氏の特集記事でした。佐藤昭治常務理事の指導の下で、先ず、7月21日に開催されたAPIC・上智大学共催「環境シンポジウム」でのモリ前大統領講演について記事原稿を起案しました。さらに、翌22日東京倶楽部で行われたAPIC主催「国際協力懇話会」の模様を報告する長文記事の原稿を起案しました。モリ前大統領の英文スピーチを翻訳し、質疑応答などの部分は録音テープを聞いて原稿を作るなどかなり地味で根気のいる仕事でした。

また、「インターン生の声」コラム欄用に約1ページのスペースを頂いたので、「APICインターン体験記」としてこの記事原稿を起案しました。計3本の記事案を準備しましたが、常務理事から文章を明晰に書くようにと何度も何度も書き直しを指示され、根気を求められましが、文章を書くことは好きだったので遣り甲斐がありました。明年1月に発行される会報では自分の執筆した記事が掲載されることが楽しみです。

APICのイメージ

 インターン開始前のAPICのイメージはハッキリとしたものではなく、ホームページの事業の欄を見ても働く場所や人々を目にする訳ではないので、私にとって「未知の組織」でした。インターン開始初日はとても緊張して不安を感じました。だが、実際に働いてみると、皆さんは笑顔でとても丁寧に迎えてくださり、安心しました。APICオフィスで観察していると、スタッフはみな、来客や電話での対応で常に同じような丁寧な姿勢を貫いていました。20日間このような執務環境にいましたが、周りから規律やマナーを学び、落ち着いた生活を過ごしたという満足感があります。規律とマナーが重視されている点が、学生と社会人の違いではないかと思いました。自分の考えるところでは、来客者から見れば職員もインターン生も区別がつかない、だからこそ身なりを整え、丁寧な態度や規律、マナーを保持しなければいけないのではないかと感じました。

 いったんAPICに入れば、インターン生としてできることは進んでやっていくべきと考え、自ら進んで、資料作成からコピー取り、お茶出しや食器洗いなどを行いました。職場の皆が心地よくスムーズに仕事ができるような環境作りに役に立てれば、という意識で取り組みました。

人と人とのつながりの重要さ

 APICで最も痛切に感じたことは、人と人とのつながり、つまり人間関係がとても重要だ、ということでした。人間関係が重要なのは組織内だけではなく、組織の外でも人間関係をベースにネットワークを構築して行くことの重要さに気付きました。

 APICでは一つのプロジェクトを実施する場合、プロジェクト管理表(ガント・チャートと言うそうです)を作成して計画的に進めていました。これは、一つのプロジェクトをいくつかのパーツに分けて、それぞれに担当の者を指名し、担当者は責任を持って取り組んでいく方針からでした。「ザビエル留学生奨学金制度」のようにAPICの外部の人たちの協力を必要とするプロジェクトもあります。多くの関係者(アクター)の協力を得ながらプロジェクトを進めて行く、そのためには、人と人との密接なつながりを構築していくことはとても重要でだと感じました。

 また、今回面白いと感じたことは、日本の社会では「根回し」が大切であるということでした。APICでは8月末、上智大学・在パラオ日本大使館と共催して、パラオ共和国で「環境セミナー」を予定していました。佐藤嘉恭理事長、荒木恵理事、及び上智大学大学院あん・まくどなるど教授が出張する予定でした。この環境セミナーについては、APICと在パラオ大使館などの間で準備が進められていたが、インターン期間の中間時点のころ、外務省に準備状況を報告に行く荒木理事に同行して担当課を訪問しました。荒木理事からは、「APICの活動を円滑に進めていくために、関係者に事前に説明を行う、いわゆる「根まわし」が大切なのだよ」と説明を受けました。

実務の積み重ね

 人とのつながりの大切さに加えて、常務理事からは、「国際協力では、実務の積み重ねが重要だ」と説明を受けました。私は、これを「小さなことの積み重ね」が大切であると理解しました。

 「国際協力」というのはたいへん大きな概念、抽象的な概念だと思います。一般的なイメージでは、国際機関や世界各国の援助団体が開発途上国に出向いて、人道的な支援、開発支援を行うといったことが考えられますが、このような「支援」に直接従事している方は、たいへん崇高で名誉ある仕事を担う人々だと評価されると思います。ただ、このような活動は、「国際協力」のほんの一部だと思います。華々しい脚光を浴びるのではない地道な「国際協力」活動もあります。

 例えば、APICの活動の中では、上智大学と協力して、ミクロネシア連邦ザビエル高校卒業生を対象にした「ザビエル留学生奨学金制度」があります。上智大学もザビエル高校もカトリックのイエズス会によって設立されたという共通点があるとのことですが、昨年より毎年1名、上智大学に留学してくるザビエル高校卒業生の支援を行っています。関係者の大きな財政支援などにより「奨学金制度」という制度設計ができただけでなく、毎年来日するミクロネシアの青年、例えば、慣れない日本でホームシックにかかってしまう青年を、丁寧に親身になってお世話をするという小さくて地味な「支援」も「国際協力」の多角的な一面なのだと理解しました。

インターンシップ後


 私は、来月9月から9ヶ月の間アメリカへと留学する予定です。海外において日本と同じような生活が出来るような環境を準備することを一つの「プロジェクト」と考え、また、「留学」そのものを「プロジェクト」ととらえるならば、この「プロジェクト」を実現させるためにはかなりの時間、労力、資金、事務的な手続きなどが必要となって来ます。APICのプロジェクトの一つである「ザビエル留学生奨学金制度」をみて多くの共通点を見出しました。私も同様に、アメリカで勉強し、異文化に触れ、多様な人々と触れ合う機会があり、また奨学金が留学中支給されることになっていますが、これらの特典は「自然にどこからか与えられた」ものではないということを忘れてはならないと感じました。留学後、何時かの時点で、何らかの形で「留学の特典」を還元していかなければならないと思います。そのためにも明確な目標設定をし、それを実現するように主体的に動いていくことが重要だと考えます。留学先では、語学に加え国際関係、国際協力、教育や環境といった分野を学びたいと考えています。さらに、日本人としてのアイデンティーを持ちながらも相手の国、地域の文化、社会、価値観なども尊重し相互理解を深めていきたいと考えます。

終わりに

 私は今回のインターンシップを通じて、①規律とマナーが必要であること、②人と人とのつながりが重要であること、③国際協力は実務の積み重ねであること-を学びました。また、将来、私はAPICが取り組んでいるような環境や教育分野における国際協力に携わっていきたいという思いが強くなりました。

 今回、APICでインターンシップをさせていただく機会を与えていただいたAPICの方々、上智大学に感謝します。APICでのインターン活動を、留学やその後の大学生活で活かしてゆく所存です。(中島)


コラム

上智大学インターンシップ科目


 上智大学では、協定を結んだインターンシップ先(企業、国際機関の日本代表部など)で就業経験をし、事前・事後の講義受講や課題提出を行うことで単位(2単位)を付与する。実務経験を通じ、大学で学んだ専門知識や経験をグローバル社会の中でどう生かしていくか、あるいは自分が残りの大学生活で何を学ぶべきか、といった気づきを得るための科目。

 科目の流れとしては、①事前講義2回、②インターンシップ(長期休暇中3~4週間)、③事後講義1回、④レポート提出、を行う。座学と実践を通じて、「グローバル人材」に必要な素養を身につけることを目指す。

 インターンシップ科目としては、「グローバルビジネス」及び「国際協力の現状と課題」の2科目がある。8月~9月に実施されるインターンシップ「国際協力の現状と課題」の実習先は、次のとおり。

① アフリカ開発銀行(AFDB)
② 国際協力機構(JICA)
③ 国際協力推進協会(APIC)
④ 国連開発計画(UNDP)
⑤ 国連経済社会理事会・広報局公認NGO OCCAM【ニューヨーク】
⑥ 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
⑦ 日本貿易振興機構(JETRO)
⑧ 日本ユネスコ協会連盟
⑨ パデコ
⑩ 三菱商事
⑪ 共同通信社【(1)ワシントンD.C. (2)ニューヨーク】
⑫ トムソン・ロイター【ニューヨーク】
(上智大学資料より)


 なお、2014年12月、APICと上智大学との間では、教育連携にかかる包括的協定が締結され、その一環としてAPICにおいて上智大学の学生をインターンとして受け入れる取決めがあります。

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