第314回カントリー情報早朝講演会
講師:前駐タイ日本国特命全権大使 佐藤重和氏
演題:「タイ情勢について」
1. 日時:2015年5月19日(火)
午前8時30分~10時00分
2. 講師:佐藤重和氏
前駐タイ王国特命全権大使
3. 演題:「タイ情勢について」
4. 場所:ホテルオークラ東京
5. 概要
講演では、佐藤前大使より、昨今のタイの情勢について、国内政治や他国間政治の動静などにつき掘り下げた分析を含めて、①タイの国民性・文化、②タイの国内政治情勢、⑤王室事情、について幅広い話があった。
なお、同大使が離任の際にタイ国日本人会に寄稿した記事「去りがタイ、タイ」を添付する。
APICでは、国際協力について大学生の理解を深めるため「APICインターン制度」を設けています。5月19日のAPICカントリー情報早朝講演会を傍聴して、次のような印象記を寄せました。
タイ王国と日本の文化的・政治的なつながりは、少なくとも下記に記す3つの点において、アジア諸国の中でも特に密接で多層的な関係性を有すると感じられる。
1つは、民間レベルでの交流であり、アジア地域の中で中国に次いで第2位を誇る在留邦人数(平成25年10月現在)、10万を超える日本語学習者数などに見られるように、学生・社会人を問わず、日タイの相互的な交流は活発に行われている。
2つ目として、政府間レベルでの関係性が挙げられる。タイでは戦後十数回に及ぶクーデターが発生し、軍政と民政が入れ代わり立ち代わり紡いできた歴史がある。こうした流動的な情勢を背景に成立したプラユット政権(軍政)に対して、日本は政権樹立後に二度の首脳会談を開催しており、日本の外交におけるタイの重要性を窺うことができる。
最後は、タイ王室と日本の皇室とのつながりである。秋篠宮殿下による公式、非公式のタイへの御訪問にみられるように、他国に比して特殊な関係性を有することは、タイと日本の親密さを見る上で重要な視点である。
こうした日本との親しい関係を語るうえで欠かせない要素こそ、本講演の中心的な内容であったタイ国民の「気質」であると思われる。「サバイサバイ(心地よい、気持ちいい)」「マイペンライ(細かいことは気にするな)」といった言葉に代表されるような、楽観的でどこか「緩さ」を備えたタイ独特の雰囲気が、日本人を魅了してやまないのだろう。
また、このような寛容的な姿勢は政治的な動向にも反映されている。講演の中でも触れられた、「細かい対立の調整が困難で、原理的な対立が続く傾向」や「王室や軍が最後には何とかしてくれるという意識」は、良くも悪くもこの楽観的な気質に少なからず由来しているように感じられる。「クーデター」という語のもつ意味合いや印象が他国のそれに比べて異なるという特徴は、政権交代後も日本が外交的なつながりを維持する上で肝要な役割果たしているように思えてならない。
2015年2月に行われた日・タイ首脳会談にて議題に上った「民政復帰」、ASEANやコブラ・ゴールドなど、内政と外交という両面的な政治動向が世界の注目を浴びているタイの今後の展望を推察するうえで、タイ文化の根底にある「緩さ」は、1つの手掛かりとして有益な情報をもたらしてくれるのではないだろうか。
(参考)
外務省HP「海外在留邦人数調査統計平成26年版」(2015年5月27日閲覧)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000074681.pdf
外務省HP「日・タイ首脳会談」『タイ王国』(2015年5月27日閲覧)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/s_sa/sea1/th/page2_000059.html
インターン生
早稲田大学大学院修士1年 小原和樹
(※このインターン生の印象記は、講師の意見やAPICの意見を反映したものではありません。)
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