第310回カントリー情報早朝講演会
講師:外務省 外務審議官(政務) 杉山晋輔氏
演題:「日本外交の回顧と展望」
1. 日時:2015年1月28日(水)
午前8時30分~10時00分
2. 講師:杉山晋輔氏
外務省 外務審議官(政務)
3. 演題:「日本外交の回顧と展望」
4. 場所:ホテルオークラ東京
5. 概要
講演では、杉山外務審議官より、①中東地域をめぐる日本の外交政策の現状、②日本の安全保障政策の変遷、③中国をはじめとするアジア地域と日本の国際関係の動向、について、外務審議官としての経験をもとに、詳細な説明がなされた。
報道メディアでは窺うことのできない、体験に根差した情報は、日本における今後の外交政策を展望するうえで、示唆に富む内容であった。
APICでは、国際協力について大学生の理解を深めるため「APICインターン制度」を設けています。1月28日のAPICカントリー情報早朝講演会を傍聴して、次のような印象記を寄せました。
今回の杉山外務審議官の講演は、オフレコベースで開催されたため、私はここでその講演の内容について引用及びそれについて直接的な意見を述べることは避ける。本稿は、国際政治を専攻している一大学生として、講演から触発されて感じたこと・考えたことについて記したものであり、それは以下の通りである。
現在の中東で一番大きな問題、それ今では誰しもが名前を知る「イスラム国」についてである。フリージャーナリストとして活躍していた後藤さん、そして民間軍事会社の経営者であった湯川さんの死を私たちはどう受け止めるべきだろうか。
世論は様々である。安倍首相は、1月17日のエジプト訪問時、イスラム国対策としてイラクやレバノンに2億ドルを拠出する、とした声明を出したが、これに対し、イスラム国側はそれを逆手に取ってその2億ドルと人質を天秤にかけた。政府はこの2億ドルを支払うことはしなかったが、私はその判断は賢明であったと思う。イスラム国は、このような身代金、また、石油密売、略奪や寄付を活動の資金としており、政府が身代金を支払った場合、それが資金源に回り、イスラム国の活動が更に活発化することが予想された。結果、尊い我が国の人命を失ってしまったが、このような一連の動きに対して、政権批判や、自己責任論に繋げるのは安直すぎると私は考える。
このような事態は12年前の2003年3月20日に、アメリカによるイラクの首都バグダードへの空爆で始まったイラク戦争時にも起こった。日本は「人道支援」を目的として、現地に自衛隊を派遣した。その時期にも、今回と同様、日本の民間人がテロリスト側に身柄を拘束され、その時に「自己責任論」という言葉が飛び交うようになったのである。
今回の報道で、後藤さんは現地に赴くことについて、「自己責任である」というメッセージを残していたことが分かった。しかし、仮に私たちがイギリス等に旅行へ行った時に、たまたまテロに巻き込まれた場合もそう捉えられるだろうか。きっと、それは偶発的なものであるから「仕方が無い」と放っておけるものではないだろうし、自己責任と多少自分が感じていたとしても、在外公館等から何も支援を得ない/または得られないということは考えにくいだろう。その上で、「自己責任論」という言葉ですべてを片付けてはならないのではないかと考えた。
今回の一連の事件を通じて、ソーシャルメディアが活発化していることもあり、短時間に様々な情報が入ってくるだけでなく、伝わってくる内容が多岐にわたり、その中には本当に事実と捉えるべきか分からないものも含まれていたことから、私たちは、情報のソースを確認した上で情報に向き合い、なぜこのような事態が起こったのかということを注意深く考える必要があるように思った。
この事件の元を辿れば、かつての帝国主義によって分断された民族の問題がそこにはある。しかし、国際社会において、自らの利益だけを求めて行動する時代はもう終わったのではないか。今回、このようなテロの攻撃対象となってしまったことで、地理的に遠い中東におけるテロの問題も他人事ではなくなったことがはっきりと分かった。戦後70年である2015年、日本は過去の戦争の歴史を振り返り、また、どうその歴史と向き合い未来に繋げていくのかということを考える必要がある。またあるいは、G0という覇権国家不在の時代が到来すると言われている中で、日本は国際社会でのプレゼンスをどう高めていき、また、テロとどう向き合っていくのか―。私たちが直面している課題は数多くあるように思う。
インターン生
成蹊大学4年 田森明美
(※このインターン生の印象記は、講師の意見やAPICの意見を反映したものではありません。)
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