一般財団法人 国際協力推進協会
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第307回カントリー情報早朝講演会

第307回カントリー情報早朝講演会

平成26年10月21日
講師:元駐フィリピン特命全権大使 卜部敏直氏
演題:「最近のフィリピン事情について」


1. 日時:2014年10月21日(火)
     午前8時30分~10時00分
2. 講師:卜部敏直氏
  元駐フィリピン特命全権大使
3. 演題:「最近のフィリピン事情について」
4. 場所:ホテルオークラ東京

5. 概要
 講演では、卜部前大使より駐フィリピン大使の経験を踏まえて、①フィリピンのイメージ・実態・現状、②地政学的な変化、③新たな日比関係、④フィリピンの問題点、⑤今後の展望、について幅広い話があった。
 卜部大使の講演からは、フィリピンが過去を越えた親日国であり、行政やインフラ網の脆弱性等の課題も依然としてあるが、ASEAN諸国の中でも、豊富な生産年齢人口や潜在的な成長力を有し、フィリピンが日本にとって魅力的な投資先であることが理解できた。

インターン学生の声

APICでは、国際協力について大学生の理解を深めるため「APICインターン制度」を設けています。10月21日のAPICカントリー情報早朝講演会を傍聴して、次のような印象記を寄せました。

「最近のフィリピン事情について」を傍聴して


 卜部前大使の講演を聞いて、フィリピンは、日本と同じ島国であり、日本人との文化的親和性は高いことが理解できた。また、フィリピンの国民性として、「貧しさに負けない明るさ」というものがあると言う。日本企業は、アジアに多く進出しているが、東南アジアは日本企業にとって優れた投資先として着目されている。その中でフィリピンは、日本との関係において、2013年秋の台風30号での援助(無償資金協力や物資援助)、また、約40年間争いを続けたアキノ大統領と、モロ・イスラム解放戦線(MILF)との武力紛争における和平の仲介で貢献をしてきた。

 私が、フィリピンと聞いて先に思い浮かぶものは経済格差の問題である。今回の講演では、フィリピンのスラム街は一つの列記とした社会(community)であり、そこには構造的な経済が存在していることを理解した。貧困は構造的な問題であることが多いが、「スラム」の中でも、お金のルールや格差が存在しているのである。フィリピンにおける貧困層の多くは、スペイン統治時代からの大土地所有制に起因する土地無し農業労働者である。彼らが都市部に移住するようになると、労働人口以上に都市人口が増えてしまうためにインフォーマルセクターとして取り込まれ、スラムへ居住し、経済的な理由で定住するという構図が生まれるのだ。このような、インフォーマルな経済システムが生まれてしまう状況と、日本における貧困問題(1日1ドル以下での生活を余儀なくされる人々だけでなく、失業などにより社会から排除されてしまう人々)を照らし合せてみることで、新たな発見があるかもしれない。

 この問題に対する次なるアプローチとして、貧困を固定化させないための対策を考えていく必要がある。フィリピンは、日本人が見習うべき明るさを備えている国であり、明るさを強みとした貧困から抜け出すための第一歩として、所得格差に関係なくより良い教育を受けられる環境づくりが第一であると考える。

 フィリピンについて学んでいる中で最近驚いたことがある。それは、日本よりも男女格差が低いということである。この数値はアジアでトップであり、成長の背景にこれが関係しているのかもしれない。日本は、その点でやや遅れをとっており、フィリピンから学ぶべき点があるように思える。


参考文献
1. 農林水産省「フィリピン共和国農業農村開発分野における協力の方向」www.maff.go.jp/j/council/seisaku/nousin/seibibukai/...2/.../data5-5.pdf
2. NPO法人アクセス http://acceftt.sunnyday.jp/
3. 中西徹「スラムの経済学」東京大学出版会、1991年。


インターン生
成蹊大学4年 田森明美

(※このインターン生の印象記は、講師の意見やAPICの意見を反映したものではありません。)


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