日・カリブ交流年2024記念 カリブ文化関係者招待計画
◆東京視察:アニメ産業見学と伝統芸能体験
到着翌日の10月21日、午前中にまずAPIC事務所にて、重家俊範APIC理事長から歓迎の挨拶に続き、日本の国内情勢、経済等についての説明があり、その後荒木恵理事兼事務局長からプログラムの説明を行いました。参加者は全員が今回初めて日本を訪問するということで、日本の文化を学べることをとても楽しみにしているというコメントがありました。
その後、一行は、デジタルハリウッド大学の高橋光輝教授(学部長)を訪問しました。事前にアンケートをとっていた参加者の関心事項に基づき、高橋教授から日本のアニメ産業についてのブリーフィングがあり、その後質疑応答が行われました。本年は同大学が創立されて30周年に当たり、30年の歩みをまとめた記念誌が参加者に配布されて、ハリウッドの映画分野などで活躍している卒業生や日本でもアニメ分野で社長となっている人が多数いるという説明がありました。また、先日アメリカ映画界の最高の栄誉とされるアカデミー賞を主催する団体が選ぶ「学生アカデミー賞」にて同大学在学生が日本人として初めて銀賞を受賞したアニメ作品『Origami』が紹介され、参加者は日本のアニメの影響力とその背景にある技術力に改めて感銘を受けたようでした。アニメ産業界と教育機関の連携が産業全体の発展に寄与している説明もありました。カリブの国はどこも日本のアニメに興味があるというものの、輸入数や視聴数等のデータがなく、高橋先生も協力したいが、他国と比較をするにもデータがないため分析ができないとコメントされていました。そのため今後アニメを産業として育てるためにデータ収集の日本との連携についても話し合いがありました。また、UWIのリビングストン・アンドリュー・ホワイト博士からはジャマイカで日本語能力を向上させた後、UWIからデジタルハリウッド大学の大学院に学生を留学させたいという発言もありました。
一行は浅草に移動し、浅草寺を自由に散策し、夕方には歌舞伎座にて、泉鏡花の『婦系図』、『源氏物語、六条御息所の巻』の演目を鑑賞し、伝統的な日本の芸能文化の深さに触れました。参加者は配布されたタブレットで英語字幕を利用し、初めての歌舞伎鑑賞にもかかわらず、物語の奥深さと美しい衣装に感動を示しました。
(左:デジタルハリウッド大学高橋教授との写真、右:浅草)
◆京都視察:文化遺産保護と多様な日本文化の体験
二日目の10月22日、参加者は新幹線で京都に移動し、日本の伝統文化や文化財保護についての知識を深めました。文化庁での訪問では、日本の文化財保護に関する取り組みが紹介され、具体的には無形文化遺産の保護方法や地域社会と政府の協力による支援策についての説明が行われました。質疑応答では、文化遺産登録までのプロセスや学生への文化振興への取組みに関する質問がありました。シェロン・ジョンソン博士(バルバドス)から文化庁へバルバドスの世界遺産登録のための資金提供に対するお礼としてお土産を渡されました。「自国の文化財保護の参考にしたい。また地域社会と政府の協力による日本の文化財保護の仕組みは、我々の国でも活用できるものであり、非常に参考になった。」と述べ、持続可能な文化保護に対する関心が強まりました。その後、歩いてすぐの京都御所にて「時代祭」行列を鑑賞しました。
午後には、金閣寺や龍安寺の石庭を訪れ、対象的な寺院の様子や日本庭園や禅文化の美しさを堪能しました。参加者の中には、庭園の静けさと調和の取れた美しさに魅了され、写真を撮る姿も見られました。
三日目の10月23日には、京都御所のツアーに参加し、英語のガイドによる解説を聞きながら、古代の建築物や庭園を巡りました。初日に鑑賞した歌舞伎の源氏物語の舞台となった日本の皇室文化や建築構造についての説明に、参加者は興味深そうに耳を傾け、歴史ある御所の美しさを堪能しました。その後、同志社大学を訪問し、卒業生の能楽師・河村晴久先生に案内いただきました。同志社大学の歴史や文化遺産についての解説があり、また河村先生自身の同大学とのつながりを交えて説明がありました。
午後の活動では、東映太秦映画村にて時代劇の衣装を身につけての写真撮影や、忍者との写真撮影などが行われました。
その後、河村能舞台を訪問し、能の解説と体験をしました。観世流能楽師である河村先生から能の歴史、能と歌舞伎の違い、舞台構造、音楽、能面や衣装、所作の意味についてお話を伺いました。衣装の解説では、着付けの実演があり、キミー・アイシャ・スブリナ・スタウト氏(トリニダード・トバゴ)が代表して着付けをしてもらいました。またお面の解説の中で、初日の歌舞伎の演題であった『源氏物語、六条御息所の巻』が扱われ、同じ演題であっても能では嫉妬の炎に燃え狂う鬼女を、般若面を被って表現していることなど歌舞伎との表現方法の違いについて大変よく理解できたと参加者は喜んでいました。能のテーマである「収穫の祈り」や「自然との共存」が現代にも通じる重要な概念であることが説明され、日本文化が表現する自然観や共生の思想についての理解を深めました。ジャネット・アンジェラ・ダイアー博士(ジャマイカ)は「東京で鑑賞した歌舞伎と能の違いについて理解が深まった。また能についての詳細な解説、文化保存の重要性についての理解が深まった。」と河村先生に対する感謝の意が直接伝えられました。
京都日程最後には、京料理・萬重で、京料理のコースと日本酒を堪能しました。日本食における四季折々の食材を利用することや見た目の美しさに感動している様子でした。社長の田村圭吾さんは文化庁の日本食の大使に任命されているようで、キミー・アイシャ・スブリナ・スタウト氏(トリニダード・トバゴ)は田村さんを本国に呼びたいと御本人に直接伝えていました。
(文化庁でのブリーフィング)
(左:文化庁、右:同志社大学)
(京都御所)
(河村晴久氏による能の解説)
◆金沢視察:伝統工芸と現代アート
四日目の10月24日には金沢に移動し、「雲龍庵」の漆工家・北村辰夫先生の北村工房(輪島が正月の地震で被災したため金沢の仮工房)を訪れて日本の伝統工芸の緻密な技術に触れました。参加者は輪島塗の制作過程を間近で見学し、その技術と美しさに心を打たれました。最後には、印籠と香箱を見せていただき、作品の緻密さを実感し、さらに香箱の制作には3年を要することに驚きの声が上がりました。参加者からは、技術の継承や若手の人材育成、高度な技術を間近で見ることができ、大変満足した様子でした。
午後には21世紀美術館を訪問し、現代アートと午前の伝統的な工芸が共存する金沢でのアート鑑賞を楽しみました。その後、兼六園、金沢城、ひがし茶屋街を散策しました。それぞれ短い時間ではありましたが、金沢を堪能できました。また参加者はひがし茶屋街で抹茶と茶道具をお土産として購入していました。
(「雲龍庵」の漆工家 北村辰夫先生と)
◆再び東京視察・訪問
五日目の10月25日には、一行は、金沢を発ち新幹線で東京に戻った後、平山達夫元在トリニダード・トバゴ大使、小寺由莉ライムレコード代表、有賀由紀子カリビアンマーケット代表と昼食をとりつつ懇談しました。その際、カリブ音楽と日本音楽とのコラボレーションを含め、関係者による対応状況について説明がありました。
その後国際交流基金を訪問し、黒澤信也理事長から日本におけるインウンドの重要性が強調された後、野口晃佑秘書室長から国際交流基金の日本文化、日本語、国際交流に関する活動について説明があり、同基金の業務内容や日本とカリブ諸国との交流等について意見交換しました。
次に外務省を訪問し、野口泰中南米局長と今回のプログラムの内容と日本とカリブ諸国との関係等について意見交換しました。各参加者からは今回の訪問で得た知見等が述べられ、それぞれの今後の活動に活かしたいという抱負等が語られました。
プログラム最後は重家俊範APIC理事長主催夕食会で締めくくられました。ショーナ-ケイ・M・リチャーズ駐日ジャマイカ大使による乾杯の挨拶があり、各国を代表して5名の参加者が感謝とプログラムを通しての感想、今後の抱負等を述べました。
(重家俊範APIC理事長主催夕食会)
(以上)
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