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バルバドス国民エンパワーメント・高齢者問題大臣招待計画

バルバドス国民エンパワーメント・高齢者問題大臣招待計画
(鈴木信「沖縄ブルーゾーンの会」会長(琉球大学名誉教授)(右から3番目)と)

APICは、2023年11月5日から13日まで、バルバドスからカーク・ハンフリー国民エンパワーメント・高齢者問題大臣を訪日招待しました。大臣には、国民エンパワーメント・高齢者問題省のジェフ・ウィルシャー事務次官、コリーン・ワルコット国家高齢者支援委員会局長、及び、デボラ・ノーヴィル福祉局局長とNGOであるバルバドス退職者組合のマリリン・ライスボーエン会長の計4名が同行しました。

バルバドスは日本と同様、少子高齢化の問題を抱えており、国民エンパワーメント・高齢者問題省は、人的、財政的、技術的資源を最大限に活用し、バルバドスの全体的な社会経済発展と社会の構成員すべてのエンパワーメントに貢献すること等を使命とし、バルバドスの貧しい人々、弱い立場にある人々、及び、疎外されている人々に活力を与えること、並びに、同国内外の戦略的パートナーと協力して効果的かつ効率的な社会的保護を提供すること等を任務としています。このような状況の下、福嶌香代子駐バルバドス日本国大使による提案及び在バルバドス日本大使館を通じた調整を踏まえ、APICとしてハンフリー国民エンパワーメント・高齢者問題大臣を招待することとしたものです。

ハンフリー大臣は、堀井巌外務副大臣及び宮﨑正久厚生労働副大臣と会談し、厚生労働省で高齢者福祉政策等について、国立社会保障・人口問題研究所で介護基盤・介護者支援、及び、超長寿社会等の研究・分析について、東京都福祉局で都のホームレス対策について説明を受けました。また、国立障害者リハビリテーションセンター、港区立男女平等参画センター(リーブラ)、及び、葛飾区シルバー人材センターとその作業所を視察しました。

地方日程として、名古屋市(市立大学医学部、障害者スポーツセンター、身体障害者福祉連合会)、山形県南陽市、及び、沖縄県を訪問しました。

各会談、説明、視察にはAPICから側嶋常務理事代行と荒木事務局長が交代で同行しました。

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バルバドス国民エンパワーメント・高齢者問題大臣招待計画
(APICによるブリーフィング)

6日午前中、APIC側から大臣一行に対し、日程について説明するとともに、重家APIC理事長は現在日本が直面している社会保障、経済、及び国際関係について説明しました。

午後、一行は厚生労働省を訪問し、日本の高齢者福祉政策(介護保険制度、地域包括ケアシステム、認知症対策、介護ロボットの活用、医療と介護の問題等)、及び、障害者福祉政策について説明を受けました。

続いて、国立社会保障・人口問題研究所を訪問し、同研究所で行っている「一億総活躍社会」に向けた中高年の活躍を支える介護基盤と介護者支援の研究、及び、超長寿社会における人口・経済・社会のモデリングと総合分析について説明を受けました。

7日午前中、一行は所沢市の国立障害者リハビリテーションセンターを訪問し、同センターの活動状況に関する英語のビデオ(日本における障害者の種類、それぞれへの対応状況、国際協力等についての説明)を観た後に、芳賀総長から質問に対する回答を得て、同センターのリハビリ施設を視察しました。ハンフリー大臣は、同センターは素晴らしい活動をしているので同センターから学びたいと述べ、追って観たビデオのリンクを入手しました。

一行は、午後、港区立男女平等参画センターを訪問し、同センターが港区男女平等参画条例に基づき、男女平等、健康、人権尊重、等に取り組んでいることについて説明を受けました。

夕刻、ハンフリー大臣は堀井巌外務副大臣と会談しました。ハンフリー大臣は、バルバドスも日本と同様、少子高齢化問題を抱えており、日本の取組に学ぶために訪日したが、有益な訪問が進行中である旨、バルバドスは日本から海洋環境関連を含め支援を受けており感謝している旨、述べ、堀井副大臣は、2024年は「日・カリコム交流年」であり、両国間の交流を更に強化していきたい旨述べるなど、和やかな会談となりました。

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(堀井外務副大臣との会談)

◆名古屋を訪問
8日午前中は、名古屋市立大学医学部を訪問し、高齢者地域医療・地域医療教育、発達障害の医療と教育について、「うまみ成分が攻撃性を抑える効果があることについてマウスを使った実験により検証した結果の報告」、「介護にかかわるリカレント教育プログラムの紹介」、「高齢化が進む中で、ウエイトなど足首に負荷をかけた歩行が歩行障害の予防につながること」、「名古屋市立大学の授業の一環として医学・看護などの学生がコミュニティでハンズオンの実習を組み込んでいること」、及び「認知症の研究の概要」についてのプレゼンテーションを含め、説明を受けました。

ハンフリー大臣からは、有益な情報を得ることができた旨、バルバドスの学生を送って学ばせたい旨の発言もありました。

同日午後は、名古屋市障害者スポーツセンターを訪問しました。同センターは、大阪にある同種のセンターに次いで2番目に古いもので、パラリンピックの車いすバスケットとアーチェリーのコーチ2名から施設の概要について説明を受け、施設内を案内してもらいました。その後、ブラインド(盲目を想定してアイマスク)の卓球、車いすのバスケットを大臣一行も体験しました。また、一行一人一人の名前を点字で作成したシールをプレゼントされ、一行全員、スマホに貼っていました。大臣は、この施設は非常に充実している旨、二人のコーチに是非バルバドスに来て指導してもらいたい旨、述べていました。

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(名古屋市障害者スポーツセンターにてブラインド卓球を体験)

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(車いすバスケットを体験)

その後、社会福祉法人 名古屋市身体障害者福祉連合会を訪問し、併設された施設を視察しました。この施設は、元々は障害者によって設立された法人ですが、今は障害者自らの資金に加えて名古屋市からも補助金が出ているとのことです。ここでは、障害のある人が30名以上働いており、自動車部品の磨きや縫製など、それぞれ作業をしている部屋を訪問した際に、障害者の方々は、大臣一行をバルバドスの旗を振って迎えました。全盲の人がパソコンで作業している様子を見た大臣は、資料を音声で聞き取っていると知り関心を示していました。大臣が、先ほどもらった点字のシールを全盲の人に差し出して、何と書いてあるか聞くと、「はんふりー」と発声し、大臣始め一行は歓声を上げました。

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(名古屋市身体障害者福祉連合会にて)

◆南陽市を訪問
9日、一行は一日かけて東京2020オリンピック・パラリンピックに際しバルバドスのホストタウンだった山形県南陽市を訪問し、大歓迎を受けました。午前11時頃、大臣一行が南陽市市庁舎に到着すると、建物の外に大きなバルバドス国旗が掲げられており、お迎えに出ていた白岩孝夫市長の先導により大臣一行が建物の中に入ると、多くの職員が大きな拍手で歓迎し、現地メディアもその模様を撮影していました。

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(南陽市市庁舎にて、拍手で出迎え)

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(白岩市長との会談)

最初の大臣‐市長会談では、市長がバルバドスを訪問したことの紹介、一行の訪日日程、バルバドス‐南陽市間で引き続き交流を進めていくこと等が話され、昼食会で改めて両者が親しく懇談しました。

市庁舎での会談後、一行は、ギネスで世界一大きい木造のコンサートホールと認定された「シェルターなんようホール」を視察し、商工観光課から、南陽市の障害者対応や観光促進の取組について説明を受け、障害者対応もなされている多目的市民体育館を視察しました。

一行は、市長との昼食後、急遽、地元のワインを売っているお店を訪問し、買い物をしました。

その後、児童福祉施設「まなびのへやバンビーナ南陽」を視察し、同施設の活動について説明を受けました。

それから一行は、熊野大社を訪問し、参拝の仕方を習って、各自、賽銭を入れ、それぞれ祈願をしていました。その後、夕鶴の里資料館を訪問し、鶴の恩返しの語りを聞いた後、館長の案内で同資料館内を視察しました。それから、公衆浴場「赤湯温泉 湯こっと」でバリアフリーの浴室等を視察しました。

赤湯駅到着から同駅出発まで、ずっと市の担当者に同行していただきました。バルバドスと南陽市との友好関係は続くことでしょう。

一行は10日午前、東京都福祉局を訪問し、都のホームレス対策について説明を受けました。都会特有の問題であるホームレスの問題について、東京都は、年2回概数調査を、5年に1回生活実態に関する聞き取り調査を、実施しているところ、都においてホームレスの人数は減少してきていること、自立支援センターを設置し、ホームレスの人々の就労支援を行っていること等の説明があったのに対し、ハンフリー大臣は、バルバドスにおいては、特にコロナ禍を経てホームレスが増加しているところ、都の取組は大変参考になるので、学びたいとし、まずは、追って実態調査の項目について教えてほしいと要請したのに対し、後日、都から調査項目の情報が共有されました。

その後、一行は、観光客で賑わう浅草で買い物をし、浅草寺を訪問しました。

同日午後、一行は、葛飾区シルバー人材センターを訪問しました。バルバドスにおいて今後「シルバー人材」の活用を推進していきたいとのハンフリー大臣の問題意識が示された後、同センターの活動について、高齢者による事務整理や軽作業等について説明があり、その後、同センターが運営する立石作業所で、高齢者によるふすま・障子の張替え作業や部品の組み立て作業を視察しました。

夕刻、ハンフリー大臣は宮﨑正久厚生労働副大臣と会談しました。同会談においては、ハンフリー大臣一行の沖縄訪問が話題となり、宮崎副大臣から、同副大臣が沖縄出身であることを紹介した後、日本の少子高齢化の状況と対応策に関し説明があり、今後とも双方が意見交換を継続することで合意しました。

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(宮﨑厚生労働副大臣と会談)

夜には、重家APIC理事長主催夕食会が開催されました。一行の訪問先やバルバドス及び中米の関係者等も交えた会合において、ハンフリー大臣は、東京、名古屋市、南陽市の訪問を終えた時点での感想や沖縄訪問への期待も披露し、和やかな懇談が行われました。

◆沖縄を訪問
「ブルーゾーン」と称される世界5大長寿地域(イタリアのサルディーニャ島、米国カリフォルニア州のローマリンダ、コスタリカのニコヤ半島、ギリシャのイカリア、及び沖縄)の一つとして名高い沖縄への訪問は、バルバドスのモトリー首相からハンフリー大臣に是非とも訪問するようにと示唆があったことを受けたものだということでした。同大臣は同首相の勧めで、Netflixで配信されているドキュメンタリーシリーズ「100まで生きる:ブルーゾーンと健康長寿の秘訣(“Live to 100: Secrets of the Blue Zones")」の中で、沖縄について紹介している動画を観た上で訪日しました。「ブルーゾーン」では、食事、運動、コミュニティへの関わりなど、いくつか共通の特徴が見られるようです。

一行は、11日に沖縄に移動し、同日午後、健康長寿を目的に開催されている「沖縄ブルーゾーンの会」の例会に参加しました。実は、「沖縄ブルーゾーンの会」の例会がもともとその時間に開催予定であったところ、ハンフリー大臣が来訪することを踏まえ、テーマを「カリブ諸国との文化交流会」に変更し、大臣にも挨拶してもらうこととしたものです。ハンフリー大臣は、挨拶において、長寿県の沖縄に来られて、上述の動画でインタビューを受けていた鈴木信「沖縄ブルーゾーンの会」会長(琉球大学名誉教授)に会うことができて、非常にうれしいと述べていました。

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(「沖縄ブルーゾーンの会」例会にて)

その後、「幸せをつかむ遺言の書き方」について講演がありました。講演後、一行は、三線の演奏と琉舞を鑑賞しました。

翌12日、一行は、午前中に空手体験で瓦割をしました。午後は公民館で89歳と82歳の女性と会い、健康的な食事、日常的な運動、コミュニティへの積極的な関わりなど、長寿の秘訣について聞きました。

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(空手体験)

バルバドス国民エンパワーメント・高齢者問題大臣招待計画
(首里城公園を見学)

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(公民館にて高齢者との交流)

13日午前、沖縄県庁で池田竹州副知事と会談しました。副知事との会談では、「かりゆしウェア」や空手も話題となり、ハンフリー大臣が自分も同行者も「かりゆしウェア」を多数着購入したこと、大臣自身、空手で瓦を割ったことを紹介するなど和やかな雰囲気で行われ、双方から、今後もバルバドスと沖縄との関係継続の意向が示されました。その後、県庁担当職員から沖縄県における高齢者問題への取組について説明を受けましたが、大臣は、後日ビデオ会議で、実務面での追加情報の提供を要請しました。

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(池田竹州副知事との会談)

ハンフリー バルバドス国民エンパワーメント・高齢者問題大臣一行は、このように日本の各地で少子高齢化の中での日本の対応状況を見聞し、多くの材料を持ち帰りました。バルバドスにおける少子高齢化に対する今後の対応が注目されます。

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