一般財団法人 国際協力推進協会
〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町6-12
紀尾井町福田家ビル3階

インタビュー:ピーター・アデルバイ 駐日パラオ共和国特命全権大使

インタビュー:ピーター・アデルバイ 駐日パラオ共和国特命全権大使

ピーター・アデルバイ駐日パラオ共和国特命全権大使にインタビューを実施し、パラオと日本の深い絆や協力分野、パラオの魅力、現在抱える課題のほか、留学や学生交流の意義、これからの日・パラオ関係に期待することなどについてお話を伺いました。【2026年6月11日実施。聞き手:APIC 田中一成常務理事、職員 加藤奈美(インタビューはAPICで翻訳)】


1.駐日パラオ大使館の主な役割や、日頃の活動についてお聞かせください。

駐日パラオ大使館の最も重要な役割の一つは、パラオと日本の長年にわたる緊密な友好関係を維持・発展させることであり、あらゆる分野での協力を通じて、両国政府・国民間の深く特別な友情をさらに発展させることです。両国首脳・政府高官による会談や公式訪問を支援し、二国間対話の調整を行うとともに、日本の政府機関や地方自治体との連携を進めています。また、地域や国際的な課題、とりわけ太平洋地域に関する課題について、パラオの立場を発信する役割も担っています。

また、日本に滞在するパラオ国民に対し、旅券発給、緊急時対応、留学生・研修生支援、パラオ人船員への福祉支援、在留登録などの領事業務も行っています。

さらに、観光や文化交流、教育分野での協力も重要な活動の一つです。日本の皆様にパラオの魅力を広く発信するとともに、文化についての相互理解を促進し、将来のパラオを担う人材育成に資する奨学金の拡充や学術交流、研修プログラムを支援しています。


2.日本とパラオの関係について、どのような特徴があり、また、特に重要な協力分野は何でしょうか?

両国関係は、「深い歴史的つながり、相互尊重、そして共有する価値観に基づく特別なパートナーシップ」です。これは日本が太平洋島嶼国と有する最も緊密で温かい二国間関係の一つであり、次のような特徴があります。

・100年以上にわたる歴史的なつながり
・パラオの日本人コミュニティや、今も日本語を話すパラオの高齢者を含む、強い人的なつながり
・民主主義という価値及び「自由で開かれたインド太平洋」への強固な決意の共有
・パラオにとって最も信頼できる開発パートナーの一つとして、長年にわたる日本の役割
・継続的な高官級の交流や多様な分野での協力に示される、真の友情

つまり、両国は単なる「パートナー」ではなく、深い相互信頼と善意によって結ばれた「友人」なのです。

日本とパラオの主な協力分野としては、以下のものが挙げられます。

①インフラ整備
日本は、パラオにおいて必要不可欠で質の高いインフラ整備を図る上で主要なパートナーです。協力分野としては、上下水道システム、送電設備、道路、橋梁、公共施設、災害に強い建築物インフラ整備などがあります。

②海洋安全保障と海洋ガバナンス
広大な排他的経済水域(EEZ)を有するパラオにとって、そのEEZを守るために日本の支援に依存しており、海洋監視や沿岸警備当局の訓練の分野で協力が行われています。違法漁業への対応努力は、パラオの安全保障と地域の安定に貢献しています。

③気候変動と環境保護
パラオは気候変動の影響を最前線で受けている国の一つであり、その強靱性と持続可能性を高める上で日本は重要な役割を果たしており、沿岸保護や気候変動への適応、廃棄物管理、再生可能エネルギー、海洋保全などの分野で協力しています。

④経済開発と観光
日本からの観光客はパラオにとって重要な存在であり、観光促進、投資、貿易、地域産業への支援などにおける協力は、パラオ経済の発展と多角化にとって重要です。

⑤教育・研修・人材育成
奨学金、JICA研修プログラム、技術協力、学術・文化交流は、将来のパラオを担う人材の育成につながっており、最も大きな成果を引き続きもたらす協力分野の一つです。

⑥文化交流・人と人との交流
姉妹都市・県間の連携、文化イベント、交流プログラムは、両国の人々の友情と相互理解を深めています。

日本とパラオの関係は、両国の政府と国民の間における協力と交流という点でかつてないほど強いものとなっており、パラオはその発展に長年貢献してきた日本からの温かく継続的な支援に心から感謝しています。今後も、インフラ、観光、人的交流の分野で協力を続けることで、この特別なパートナーシップはさらに強化されていくことでしょう。


3.日本人にもっと知ってほしいパラオの魅力は何でしょうか?

パラオは、日本のダイビング愛好家や海の魅力を楽しむ方々の間ではよく知られていますが、陸上で体験できる文化的・伝統的な観光資源の開発(バベルダオブ島全島におけるものも含む)にも取り組んでいます。

日本の皆様には、パラオは美しいリゾート地であるだけではない、ということを強調したいと思います。以下のような点が魅力だと思います。

①パラオと日本を結ぶ深い歴史的つながり
多くの日本人はパラオと日本が温かい友好関係にあることを知っていますが、その歴史的なつながりがどれほど深く、意義のあるものかについては、まだ十分に知られていないかもしれません。日本の影響は、パラオの言語、食文化、建築、地名などに今も残っており、多くの高齢者は今でも日本語を話します。この共通の歴史は、決して重荷ではなく、両国の人々を結び続ける架け橋なのです。

②ダイビングだけではない、比類なき海洋環境
パラオは世界有数のダイビング・スポットとして知られていますが、海洋保全における取組についてはまだ十分に知られていません。パラオ国立海洋保護区、ジェリーフィッシュ・レイク、健全なサンゴ礁、そして「ブル(bul)」と呼ばれる伝統的な資源保全の仕組みは、次世代のために海を守ろうとするパラオの強い思いを表しています。

③パラオ独自の文化と伝統
パラオの文化は豊かで、地域社会における価値観に深く根ざしています。伝統的建築物による集会所「バイ(bai)」や、地域に受け継がれる習慣、伝統的な貨幣、そしてパラオと日本双方の影響を受けた食文化などは、訪れる人々に独自の文化体験を提供します。

④パラオの人々の温かさとおもてなし
日本人旅行者からは、パラオで最も印象に残ったものとして、人々の優しさを挙げる声をよく聞きます。高齢者を敬う心、地域社会における強固な価値観、そして心からのおもてなしによって、訪れる人々は観光客としてではなく、家族として迎えられていると感じるのです。

⑤穏やかで安全な環境
平穏で安全な環境、きれいな空気と水、そして美しい自然に囲まれたパラオは、くつろぎと癒しを求める日本人旅行者にとって理想的な場所です。

⑥海以外にも楽しめる冒険と自然体験
パラオは海の魅力だけでなく、滝、ジャングルでのハイキング、淡水プール、カヤック、バードウォッチング、第二次世界大戦関連の遺跡など、エコツーリズムやアウトドアを楽しみたい旅行者に多様な体験を提供しています。

日本の皆さんに是非お伝えしたいメッセージは、パラオは単に「訪れる場所」ではなく、「つながる場所」、即ち自然とつながり、歴史とつながり、そして100年以上にわたって育まれてきた友情とつながる場所であるということです。より多くの日本の皆様に、パラオを特別なものにしている美しい自然、文化、そして人々の温かさをぜひ体験していただきたいと思います。


4.パラオが現在直面している課題にはどのようなものがあり、それに対して日本にどのような役割を期待しますか?

現在、パラオは経済、環境、安全保障に関わる複合的な課題に直面しており、その多くは太平洋小島嶼国に共通するものですが、以下の点が課題と考えられます。

①経済的な脆弱性
パラオ経済は観光業への依存度が高く、世界規模の衝撃による影響を受けやすい状況にあります。また、少ない人口、限られた産業基盤、主要市場からの距離といった要因も、経済成長の制約となっています。

②気候変動と環境保護
低海抜島嶼国であるパラオは、海面上昇、海岸浸食、サンゴ礁の劣化、廃棄物管理などの課題に直面しています。環境を守りながら気候変動への適応力を高めることは、最も重要な優先課題の一つです。

③インフラ整備
持続可能な発展と生活の質の向上のためには、水供給、送電、交通網、公共施設など、災害にも強いインフラの整備を引き続き進めていく必要があります。

④海洋安全保障
広大な排他的経済水域(EEZ)を有するパラオは、違法漁業や海洋上のさまざまな課題への一層の対応が求められており、主権を守り、地域の安定に貢献するためにも、海洋安全保障の強化は不可欠であり続けます。

日本には、質の高いインフラ整備、海洋安全保障分野での協力、気候変動対策、人材育成などを通じて、今後もパラオを支援していくことを期待しています。再生可能エネルギー、廃棄物管理、奨学金、技術研修、人的交流などの分野における継続的な支援は、パラオの強靱性を高め、長期的な発展を支えることにつながります。

両国が協力することによって、両国民にとり安全で豊かで、希望に満ちた未来を築いていくことが可能なのです。


5.APICでは、留学生奨学金制度を通じて、パラオからの留学生を支援しており、昨年、パラオからの学生1名が上智大学を卒業し、現在も1名が在学中です。また、毎年夏に実施している「太平洋・カリブ学生招待計画」で、パラオからの学生が上智大学の東アジア研究夏季短期講座に参加していますが、このような日本への留学や学生交流には、どのような意義があるとお考えですか?

上智大学への奨学留学生や「太平洋・カリブ学生招待計画」をはじめとする両国間の留学・学生交流プログラムには、教育、文化、外交の面で深い意義があり、その価値は単に学問研究にとどまらず、両国関係を支え、さらに発展させていく次世代リーダーの育成にもつながっています。

①パラオの未来を担う人材の育成
パラオのような小島嶼国にとって人材育成は最も重要な国家的課題の一つです。留学プログラムは、パラオの学生に質の高い教育を受ける機会を提供し、国の発展に必要な専門知識や技能を身に付け、また、将来、政府、企業や市民社会で活躍するリーダーを育てることにつながります。

②人と人とのつながりの強化
こうしたプログラムは、両国関係を特徴づける文化的・人的なつながりをさらに深めます。学生たちは友情を育み、日本の文化を身近に、また言語や習慣を学ぶことで、両国を結ぶ文化の架け橋となり、将来の協力関係を支える存在となります。

③学びの可能性を広げ、相互理解を促進する
日本で学ぶことは、新しい学問分野や先端技術、多様な考え方に触れる機会となり、同時に、日本の学生や教員がパラオや太平洋島嶼国への理解を深める機会にもなります。こうした経験は、学生たちの世界観を広げ、パラオの発展に貢献する力を育みます。

④次世代の日本・パラオ関係を担う人材の育成
日本で学んだ学生たちは、日本文化への理解や人的ネットワークを築き、両国の協力関係に貢献したいという思いを持って帰国します。そして、政府、教育、観光、国際機関などさまざまな分野で活躍し、将来のリーダー、そして日本とパラオを結ぶ重要な架け橋となっていきます。

教育は、目立たないものの強力な外交の手段であり、若い世代に投資し、交流の機会を創出することで、長く続く友情と相互信頼を育み、両国関係の未来を支える強固な基盤が築かれることに役立ちます。

インタビュー:ピーター・アデルバイ 駐日パラオ共和国特命全権大使
2023年度「太平洋・カリブ学生招待計画」のフェアウェルパーティーにて、スピーチ中のアデルバイ大使(最左)(2023年7月)

6.今後、日本とパラオの関係がどのように発展してほしいと願っていますか?

将来に向け、両国関係が、さらに強く、深く、そしてより活力あるものへと発展していくことを願っています。両国はすでに、信頼、共通の価値観、そして100年以上にわたる歴史的なつながりに支えられた関係を築いていますが、今後も両国民に利益をもたらす様に、この友情をさらに発展させていく大きな可能性があります。具体的には次の点に注目しています。

①持続可能な開発に向けたパートナーシップ
気候変動に強いインフラ整備、再生可能エネルギー、環境保全、持続可能な観光、そして経済の多角化などの分野で、より緊密な協力が進むことを期待しています。日本の優れた技術や経験は、パラオの国づくりの方向性と非常によく合致しています。

②海洋安全保障における協力の深化
日本とパラオはともに海洋国家であり、安全で安定した、開かれた海洋に依存しています。海洋監視、海上保安能力訓練、重要インフラ保護などにおける協力をさらに深めることで、地域の平和と安定に貢献し、そして両国が共有する「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に役立つでしょう。

③人と人とのつながりと教育交流の充実
両国関係の中心にあるのは、両国民間の友情です。学生交流や奨学金制度、文化交流、自治体間交流が、そして両国の若い世代が互いに学び合う機会がさらに深まることを期待します。

④経済・観光分野での連携強化
日本からの観光客はパラオにとって重要な存在です。より多くの日本人にパラオを訪れていただき、観光分野での協力や、日本による投資がさらに進むことで、パラオの持続可能な発展につながることを期待します。

⑤イノベーションと新たな分野での協力
世界が変化する中で、新たな協力分野も生まれて来ています。デジタルトランスフォーメーション、サイバー安全保障、防災、海洋科学、健康安全保障などの分野で協力を深めることは、太平洋地域の未来を形づくるとともに、相互に有益となる協力の新たな可能性を生み出すでしょう。

両国関係は、強固で、信頼し合い、深い絆を有していますが、将来に向け、持続可能な開発、海洋安全保障、教育、経済、新たな分野における協力を深めることにより、今以上にダイナミックなパートナーシップを築くことが出来るでしょう。このような努力を通じ、両国の友情は今後も発展を続け、インド太平洋地域の平和と安定、そして繁栄に貢献していくでしょう。

何よりも、この関係が今後さらに発展していくことを、そして、より多くの日本人がパラオを訪れ、たとえパラオ人の人口を上回るとしても、パラオで暮らす日本人が将来より増えることを期待します。

インタビュー:ピーター・アデルバイ 駐日パラオ共和国特命全権大使
アデルバイ大使(左)と田中常務理事(右)

【略歴】
パラオ共和国コロール州 出身
2022年6月 - 現在 駐日パラオ共和国特命全権大使
2022年4月 -  駐日パラオ共和国大使館 次期大使
2021年8月 -  駐日パラオ共和国大使館 公使参事官
2018 - 2022年 パラオ・アイライ州議会議員
2016 - 2021年 アイバドール大酋長付 デルバイ(パラオ・コロール州)
2016 - 2019年 コロール州酋長議会 事務局長(パラオ・コロール州)
2016 - 2016年 エマウス高校 ボランティア教員 (パラオ・コロール州)
2014 - 2017年 ロック・ビルダーズ建設会社 代表
2012 - 2013年 駐台湾パラオ共和国特命全権大使
2002 - 2012年 駐日パラオ共和国大使館 公使参事官
2001 - 2002年 在ハガッニャ・パラオ共和国総領事館 領事(米グアム)
1993 - 2001年 パラオ共和国議会上院議長広報担当補佐及び各種委員会補佐歴任
1991 - 1992年 プライド・オブ・ミクロネシア 理事(米グアム)
1989 - 1992年 グアム・トリビューン新聞社 記者(米グアム)
1986 - 1987年 マウント・カーメル小学校 教員(米グアム)
最終学歴:
1983年 米 グアム大学政治学部卒業

WHAT'S NEW

- 2026.9.17 EVENTS
第431回早朝国際情勢講演会を更新しました。

- 2026.9.17 PROJECTS
インタビュー:ピーター・アデルバイ 駐日パラオ共和国特命全権大使を更新しました。

- 2026.9.17 PROJECTS
インタビュー:ショーナ-ケイ・M・リチャーズ 駐日ジャマイカ特命全権大使を更新しました。

- 2026.9.10 EVENTS
マーシャル諸島財務・銀行・郵政大臣招待計画を更新しました。

- 2026.9.10 EVENTS
バヌアツ気候変動適応・気象・地象災害・エネルギー・環境・国家災害管理大臣招待計画を更新しました。

- 2026.9.10 EVENTS
フィジー公共事業・気象サービス・運輸大臣招待計画を更新しました。

- 2026.7.16 EVENTS
第430回早朝国際情勢講演会を更新しました。

- 2026.7.31 GREETINGS
理事長挨拶を更新しました。

- 2026.6.18 EVENTS
第429回早朝国際情勢講演会を更新しました。

- 2026.5.14 EVENTS
第428回早朝国際情勢講演会を更新しました。

All Rights Reserved. Copyright © 2008-2026, The Association for Promotion of International Cooperation.