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インタビュー:ショーナ-ケイ・M・リチャーズ 駐日ジャマイカ特命全権大使

インタビュー:ショーナ-ケイ・M・リチャーズ 駐日ジャマイカ特命全権大使

2024年は、日本とカリブ共同体(CARICOM)が事務レベル協議を開始後30年が経過した年を記念する「日・カリブ交流年2024」であるとともに、ジャマイカと日本の外交関係樹立60周年を迎えます。この機会に、APICは駐日ジャマイカ大使であるショーナ‐ケイ・M・リチャーズ大使にインタビューを行いました。このインタビューでは、ジャマイカ大使としての多面的な役割やジャマイカと日本のパートナーシップ、国際協力のための若者のエンパワーメントの重要性についてお話を伺いました。【2024年4月30日実施。聞き手:APIC 荒木恵理事、職員 淺野未莉(インタビューはAPICで翻訳)】


1.ジャマイカ大使としてのお仕事について教えてください。また、ジャマイカはカリブ地域の英語圏の中で唯一日本に大使館を設置している国ということですが、他のカリブ諸国の外交活動も支援しているのでしょうか?

ジャマイカ大使としての私の任務は多岐にわたります。貿易・投資促進、政府開発援助(ODA)、政治的交流、文化外交、在日ジャマイカ人の支援など、ジャマイカの国益を守り、促進するためにあらゆる分野に従事しています。

中でも貿易・投資促進は最優先事項であり、日本とジャマイカの経済関係を強化するために、民間企業や関係機関と協議を行っています。ODAに関しては、外務省だけでなく国際協力機構(JICA)との協力が重要であり、緊密なコミュニケーションを取っています。政治面では、外務省、特に中南米局カリブ室とは密接に連携し、日本の国会議員とも交流しています。文化外交面では、レゲエ音楽やスポーツ、食文化を通じて、ジャマイカの魅力をアピールしています。また、学術交流にも力を入れており、大学での講演などを行っています。先日は、国際基督教大学で「小島嶼開発途上国(SIDS:Small Island Developing States)にとっての2024年の重要性」をテーマに講演をしました。その他、在日ジャマイカ人コミュニティ(約1,000人)の支援や、数少ない駐日女性大使の一人として女性のエンパワーメントとジェンダー平等の推進にも取り組んでいます。

ジャマイカは、CARICOMの誇り高いメンバーであり、他のカリブ諸国の個々の外交活動を直接支援することはありませんが、日本における唯一の英語圏カリブ大使館として、CARICOM地域全体の利益を代表するために最善を尽くしています。

限られた財政及び人的資源の大使館ではありますが、私は日本だけでなくオーストラリア、インドネシア、ニュージーランド、フィリピン、韓国も兼轄しています。ジャマイカと日本の60年にわたるパートナーシップをより力強いものとなるよう尽力しています。

2.大使としての活動分野は多岐にわたりますが、ジャマイカと日本の良好な関係を考慮すると、最も力を入れているのはどの分野でしょうか?

過去60年にわたり、ジャマイカと日本は強力なODAプログラムを通じて、環境保護、防災、能力開発、教育、研修などの様々な分野で緊密な協力関係を築いてきました。文化面においても、音楽、スポーツ、食を通じて強い結びつきを持っています。これまで培ってきた友好関係を基盤に、近年は経済協力の深化に注力しています。2019年のアンドリュー・ホルネス首相の訪日時に安倍首相(当時)も立ち合いの下署名された日・ジャマイカ租税条約により両国は経済協力関係を拡大することに合意し、現在大使館はとりわけ貿易と投資の促進に力を入れています。

貿易面では、ジャマイカ産コーヒーが最大の輸出品目であり、世界最高品質の綿である西印度諸島シーアイランドコットン(海島綿)の唯一の供給国でもあります。これらに加え、コーヒーラムケーキ、ジャークチキンの調味料、ソレルドリンク(ハイビスカスドリンク)、受賞歴のあるラム酒など、ジャマイカの特産品の輸出拡大を図っています。今年3月には、アジア最大の食品・飲料展示会「FOODEX JAPAN 2024」にジャマイカ企業4社が初めて出展し、これらの新商品を紹介しました。

投資面では、日本企業にラテンアメリカ・カリブ地域を投資先として検討していただけるよう働きかけています。例えば丸紅(株)は既にジャマイカのエネルギー分野に進出し、再生可能エネルギーへの移行を支援しています。また、米国、南米、中米、パナマ運河に近接し、大型船が停泊可能な港湾を持つジャマイカは、グローバルな物流拠点としての可能性を秘めています。日本企業によるジャマイカへの投資増加を期待しており、在ジャマイカ日本大使館と協力して取り組んでいるところです。

3.2022年10月、APICはパーネル・チャールズ・ジュニア農業・漁業大臣を日本に招待しました。この招待プログラムは大臣の仕事やキャリアにどのように役立ったか、大使のお考えを聞かせていただけますか?

まずAPICの招待プログラムにパーネル・チャールズ・ジュニア農業・漁業大臣が参加できたことに心から感謝しています。チャールズ・ジュニア大臣は有望な若手政治家で、コロナ禍からの復興という重要な時期に農業・漁業分野を担当しています。日本滞在中は、研究、開発、およびさまざまな機関を通じて、水産資源の持続可能な利用に関する日本の専門知識・先進技術を肌で感じることができたようです。

またプログラムを通じて、省の発展だけでなく、リーダーとしての成長にも大きな影響を受けたと聞いています。訪問先での学びを「日本から学んだ10の教訓」としてまとめ、省の業務だけでなく自身のキャリア形成にも活かそうとする姿勢に感銘を受けました。日本の組織的かつ体系的なアプローチ、綿密な調査、規律などは、チャールズ・ジュニア大臣の心に強く印象を残したようです。同大臣のリーダーシップに役立つだけでなく、個人としての成長にも寄与すると信じています。

この訪問の成果として、今年2月、カミナ・ジョンソン=スミス外務・貿易大臣が訪日した際、上川陽子外務大臣とともに、気候変動が漁業に与える影響を追跡し、資源管理に役立つ海洋調査船の供与に関する無償資金協力の書簡に署名しました。この調査船は気候変動への対処だけでなく、研究能力の向上、ブルーエコノミーの発展にも寄与するもので、ジャマイカ政府や国民にとって非常に価値ある貢献だと考えています。これはとても好ましく評価されるニュースであり、APICの招待計画により、具体的な成果が生まれたことに改めて感謝申し上げます。

インタビュー:ショーナ-ケイ・M・リチャーズ 駐日ジャマイカ特命全権大使
パーネル・チャールズ・ジュニア農業・漁業大臣招待計画にて、ジャマイカ大使公邸を訪問(2022年10月)。

4.「日・カリブ交流年2024」に際して、ジャマイカではどのようなイベントを計画していますか?

「日・カリブ交流年2024」は、年初からすでに日本とカリブ両地域でさまざまな記念行事が開催されています。ジャマイカ大使館では1月に開催された「ジャマイカブルーマウンテンコーヒーの日」の記念イベントで幕を開けましたが、最も重要なイベントは、2月のジョンソン=スミス大臣の公式訪問でした。同大臣は上川大臣との会談、JICAの田中明彦理事長との会談、APIC主催昼食会など、二国間関係の重要なパートナーと交流する機会を持ちました。また、丸紅(株)やジャマイカコーヒー輸入協議会、一般社団法人 西印度諸島海島綿協会、オートターミナルジャパン(株)との意見交換も行いました。

ジャマイカのウエストモアランド・パリッシュとの間で姉妹都市提携を結ぶ鳥取県の平井伸治知事も、ジョンソン=スミス大臣と面会されました。鳥取県とは文化・スポーツ分野の活発な交流を続けており、J-J(日本・ジャマイカ)パートナーシップの重要な一部を担っています。私たちが主催したJ-Jパートナーシップ60周年記念レセプションでは、鳥取県立岩美高等学校からお招きしたジャズバンドが素晴らしい演奏を披露してくれました。

外相訪問の後は、対日輸出促進を目指して「FOODEX JAPAN 2024」にも参加しました。さらに、CARICOMのカーラ・バーネット事務局長の訪問もあり、JICA等との会合に加え、加盟国の若手外交官対象のJUNTOS研修プログラムも日本で実施されました。

ジャマイカにおいては、3月に沖縄のレゲエグループが公演を行い、外務省主催のレセプションも開かれました。今後の予定としては、5月にはジャズピアニストのモンティ・アレキサンダーがブルーノート東京で、フォークシンガーのスティーブ・ヒギンズが東京と鳥取で公演を行います。5月17日にはジャマイカ出身のレゲエミュージシャンであるボブ・マーリーの伝記映画が日本で公開され、原宿には大規模なポップアップストアがオープンします。私も5月6日放送のJ-WAVEのボブ・マーリー特集番組に出演しました。10月には、ジャマイカと日本の写真家による作品展示交流も企画しています。音楽、食、スポーツ、芸術など、あらゆる分野を通じて友好年を祝いながら日本とジャマイカの交流と文化の多様性を紹介したいと考えています。

5.APICでは、西インド諸島大学(UWI)の各キャンパスから1名ずつ、計5名の学生を6月末から7月中旬にかけて招待します。昨年に引き続き、今年も学生たちとともに表敬訪問の機会をいただけますでしょうか?また、学生たちへのメッセージをお願いします。

再び学生を招待していただけることを非常に嬉しく思っており、昨年と同様に皆さんとお会いできることを楽しみにしています。「日・カリブ交流年2024年」という特別なタイミングでの来日は、日本とカリブの長年の友好(「トモダチ」)関係と協力関係への理解を深める素晴らしい機会になるでしょう。地理的に遠く離れてはいますが、日本とカリブ地域は様々な分野で緊密で強固な友好関係を築いており、APICの充実した教育・文化プログラムを通じて、両地域の多様な結びつきを体験できると信じています。

この素晴らしい経験が、皆さんの心に強く刻まれ、将来、それぞれ独自の方法で日本とCARICOMの関係強化に貢献する原動力になることを願っています。このプログラムが皆さんに感銘を与え、将来に向けたインスピレーションとなることを確信しています。最後に日本語でひと言、「もうすぐ日本で会いましょう!」

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2023年度「太平洋・カリブ学生招待計画」にて、UWIの学生とともにジャマイカ大使館を訪問(2023年7月)

6.カリブ諸国は強い結束と連帯を示していますが、その理由を説明していただけますか?また、カリブと太平洋の結びつきについても教えてください。

カリブ諸国が強い結束を示す理由は、植民地支配からの独立を目指した共通の経験にあります。1804年にフランスからの独立を果たしたハイチのモットー「L'union fait la force(団結は力なり)」が示すように、カリブ諸国は団結が力をもたらすと信じています。1973年にCARICOMを設立して以来、教育、貿易、観光、防災などの分野で協力を進め、加盟国の発展を促進しています。CARICOMは発展途上国の中で最も長く続く共同体であり、設立50周年を迎えた昨年も加盟国は持続可能な発展を目指して協力を深めました。

カリブ諸国の結束は、歴史的・文化的背景にも根ざしています。多くの国では、人口の大部分が西アフリカから連れてこられた奴隷や、インドや中国からの契約労働者の子孫であるため、食べ物や音楽、ダンス、芸術などに共通の歴史と文化が存在し、国境を越えた一体感の基盤となっています。

太平洋島嶼国とカリブ諸国は、自然環境の類似性に加え、小規模な人口、気候変動の脅威など共通の課題を抱えています。特に気候変動対策では連携を強化しており、国連などの多国間フォーラムで、SIDSの持続可能な開発を推進するため協力しています。太平洋島嶼国は海面上昇による影響を真っ先に受ける運命にあり、まさに「最初に消える」存在です。カリブ諸国も同様の危機感を持っており、「1.5℃目標」の達成を訴え続けています。

ジャマイカ政府は2021年に二国間関係の多様化のため、キリバス、マーシャル諸島、パラオ、サモア、トンガ、ツバルの6カ国との外交関係樹立を閣議決定しました。このうち、ツバルとサモアとの国交はすでに成立し、貿易、投資、政治、技術・経済協力などの拡大を目指しています。気候変動対策を始め、小島嶼国が直面する課題の解決に向け、太平洋の国々とのパートナーシップを発展させていきたいと考えています。

日本は島嶼国の脆弱性をよく理解しており、ODAを通じて継続的な支援を行っています。カリブと太平洋の島嶼国に対する日本の理解と支援に心から感謝の意を表すとともに、SIDS諸国への引き続きの支援を期待しています。

インタビュー:ショーナ-ケイ・M・リチャーズ 駐日ジャマイカ特命全権大使
APIC荒木理事(左)とリチャーズ大使(右)

【略歴】
西インド諸島大学で学士号、ジョージ・ワシントン大学のエリオット国際情勢研究科で国際政策・実践の修士号を取得。1994 年にジャマイカ外務・貿易省に入省し、2005 年には軍縮における国際連合の研究員となる。2012 年から2016 年まで国際連合ジャマイカ政府代表部 代表代理を務め、軍縮問題や海洋、海洋法、及び国連安全保障理事会の改革に携る。2014 年にはギリシャのローズアカデミーにて海洋法・海洋政策のディプロマを取得。2016 年から2020 年まで外務・貿易省の二国関係課ディレクターを務めた。2022 年、国連事務総長の軍縮諮問委員会のメンバーとなり、2024年1月から議長を務めている。現在、駐日ジャマイカ特命全権大使の他、オーストラリア、インドネシア、ニュージーランド、フィリピン、韓国も兼轄。

2024年5月、ミドルベリー国際大学院モントレー校の卒業式(学位授与式)でスピーチを行い、名誉人文学博士号が授与された。

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