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インタビュー:西インド諸島大学(UWI)卒業生 ボビー・スウクーさん

インタビュー:西インド諸島大学(UWI)卒業生 ボビー・スウクーさん

ボビー・スウクー(Bobby Sookhoo)さんはトリニダード・トバゴ出身で、西インド諸島大学(University of the West Indies:UWI)の卒業生です。2017年1月にAPICの「太平洋・カリブ学生招待計画」※1 にて来日し、上智大学主催の短期プログラム January Session in Japanese Studies に参加しました。UWI卒業後、文部科学省(MEXT)国費外国人留学生奨学金に合格し、2019年4月に筑波大学大学院に入学しました。現在、医療科学の修士課程に在籍しています。


短期プログラムに参加して

Q1.2017年に短期プログラムで来日した際は約1カ月の滞在でしたが、当時の経験について、どのような印象だったか、それが勉学に対する姿勢や将来の目標にどのような影響があったか教えてください。

正直に言うと、最初にこのプログラムに参加できると知ったとき、何を期待したらいいのかわかりませんでした。日本に来られるということで大変興奮しました。実際に来日したときはとても楽しかったですし、大学など、何もかもが違うと感じました。しかしそれは予想できることで、良い意味での違いだと思いましたし、とても興味深かったです。他にも興味深かったのは、このプログラムでは日本人だけではなく様々な国からの学生と出会うことができたことです。これは予想していませんでした。ここまで多様な人々と交流できるとは思っていませんでしたし、これにも非常に魅力を感じました。たくさんの異なる国からの学生が一堂に会し、一緒に学び、仲良くなり、様々な経験を共有することができる場所だと思いました。

上智大学での講義のほかに、日本の様々な場所を巡る機会がありました。実際に行ったのは東京周辺だけだったものの、とても良い機会でした。色々な場所を訪れ、日本料理を食べ、異文化を体験するなど、全てとても面白く、忘れられない経験となりました。プログラム修了後に帰国し、UWIでの勉強を再開した際には、大学最後の年でした。今後について考えているときに、短期プログラムに参加した経験がきっかけで、「日本に戻りたい」「日本でもっと長い時間を過ごしたい」と度々思うようになりました。それと同時に、ただ単に「日本にいたい」というわけではなく、勉強も続けていきたいと考えていました。これらの要因により、私は日本にいながら勉学を追求できる方法を探ることになりました。これが、日本で勉強する決断をするに至った最初の原動力の一つでした。

インタビュー:西インド諸島大学(UWI)卒業生 ボビー・スウクーさん

筑波大学大学院生として来日するまで

Q2.ボビーさんはUWIで生物工学と微生物学を学んでいて、修士課程へ進むことを検討した際には色々な選択肢があったかと思います。その様々な可能性の中から、また日本に来て大学院に進学しようと決断した主な理由はなんですか?

先ほども申し上げたように、上智大学での短期プログラムは私の決断に大きな影響を与えました。しかし、プログラムに参加する前から、私は長いあいだ日本のことが好きでした。例えば、日本のアニメ文化や音楽、社会そのもの、そして重要なのが学術研究分野で進んでいることです。教育や技術の発展など、優れた評価を得ています。自然災害に対する備えや、またそうした災害を克服していることについてもよく知られていて、とても興味があります。また、私は幼いころ、武術を習っていたことがあります。具体的に言うと空手を習っていて、これは歴史を辿ると日本、特に沖縄の文化にたどり着きます。これもまた日本への関心を深めるきっかけとなりました。UWIを卒業したあとの選択肢について探していたとき、これらの要素と、私の一番の目標である「勉強する」ということ、そして上智大学での短期プログラムに参加したことによって、日本で勉強する方法を探ることになり、その中で、文部科学省(MEXT)の奨学金制度について知りました。そしてこれが日本で勉強しながら、日本の豊かな文化をさらに体験する機会を提供してくれると考えたのです。


Q3.短期プログラムに参加する前から日本に興味があって、色々なことを知っていたのですね。つくばでも空手は続けているのですか?

空手は私がこの大学で学ぶことになった際に楽しみにしていたことの一つでした。来日して6~8カ月経ったころ、武芸を習うことができる施設を探して実際に試してはみたのですが、残念ながら続けることはできませんでした。というのも、研究を優先しなければならなかったからです。そのため、今はどこかのクラブや施設のメンバーにはなっていません。しかし昔の経験はまだ自分の中にありますので、いつか習うことができるようになったときのために、忘れないように自分で練習を続けています。


Q4.文部科学省の国費外国人留学生として採用されるためにどのような準備をしましたか?申請のための準備を全て終えるまでにはどのくらい時間がかかりましたか?

大学最後の年に奨学金の申請を検討はしていたものの、申請に必要な準備のすべてについて詳しくは調べていませんでした。ですがGPAなど、必要な成績の基準については調べました。それらについて調べたあと、その基準に達するように勉強に集中しました。そして、卒業が近付いてきた頃、ついに奨学金に申請することを決断し、そのためには何が必要かを調べました。申請を通して、自分がこの奨学金を受給するのに相応しいか、文部科学省が求める人物像に沿って、期待に応えることができるか確かめました。その後、必要な書類やその他全てを準備しました。奨学金のために書類を準備するのは課題のようには感じておらず、むしろ楽しみで、私の研究への情熱や、日本にいながら目標を達成したいという思いを表現するいい機会だと感じました。自分がやりたいことや、それらを成し遂げるために何故ここにいる必要があるかを示すチャンスだと思いました。これは私が奨学金の申請をするにあたって重点を置いていたことです。面接でも同じで、自分の情熱や、この奨学金に申請したい理由などについて説明できるように準備しました。


Q5.準備は難しかったと感じましたか?それとも楽しんでいましたか?

結構面白かったです。文部科学省の奨学金は、主に二つの目的があって、一つは研究、もう一つは日本文化との融合です。これらは不可欠です。ただ日本で研究がしたいというだけではいけないのです。私が研究計画書を書いているとき、色々な大学の教授について、どのような研究を行っているのかなど調査し、それらの分野に合わせて書きました。日本の中でも複数の地域を検討し、環境が研究に適しているか、暑すぎないか、寒すぎないかなどを調べ、行きたい大学を探しました。


来日してから

Q5.予想外の困難や想定していたカルチャーショックもあったことかと思います。これまで、もしくは今、どのような困難に直面していますか?そのような困難を乗り越えるために何か試しましたか?

これまでの2年間、研究室では結構トラブルがありました。私の研究室には外国人留学生が5,6人いて、日本人学生は1,2人です。トラブルは主に日本人と外国人のコミュニケーションが原因だったかと思います。これはまだ完全には解決されていなくて、私が今直面している大きな問題の一つです。日本人には日本人なりの仕事や仕方やコミュニケーションの取り方があるのは理解できる一方で、私たちがいるのは世界中から学生を受け入れている大学なので、教授や職員、留学生たち含めて、やり方に違いがあることを理解する必要があると感じます。問題を解決する方法はあるはずなのです。現時点では、私の指導教員は私のことを理解してくれていて、よく話をするのですが、学生と日本人スタッフとの間にある問題を明確にすることを手助けしてくれます。これは問題を解決するための手段の一つだと思います。他にも問題があるとしたら、ふるまいや癖、仕草などその人の「在り方」です。私の経験上、私と日本人の「在り方」にはたくさんの違いがあります。それは残念ながら、そして意図的に、研究や仕事の環境において問題を起こします。私に対して問題を感じている人はいるかもしれませんが、私はそこで起きている問題を理解しようとし、相手を責めるのではなく、可能であれば状況を分析して、受け入れようとします。これも問題を解決する際に考慮することの一つです。

インタビュー:西インド諸島大学(UWI)卒業生 ボビー・スウクーさん
(筑波大学にて)


ボビーさんのこれから

Q7.将来の夢や目標について教えてください。

難しい質問ですね。私の目標についてお話しします。私の目標は、さらに高度な教育を追求すること、そして正式な医学研究者になり、研究業界に貢献することです。それと、私はしばらくの間、アジア周辺で仕事がしたいと思っています。この地域から学ぶことはたくさんあると考えています。これは私が今の時点で主に目指していることです。


後輩へのメッセージ

Q8.APICの学生招待計画は引き続き実施を予定していて、それを通して多くの学生が上智大学の短期プログラム※2 に参加しています。このプログラムへの参加を考えている学生や、既に参加済みで、修士号取得のため、もしくはJETプログラム※3 に参加し教員として再度来日を考えている学生にメッセージやアドバイスがあれば教えてください。

実は、多くの人から同じような質問がたくさんありました。お答えするのが少し難しいのですが……まず、JETからお話ししましょう。私自身はJETの教員としての経験はありません。同級生や知り合いにこのプログラムに参加している人は多く、彼らから聞いた話でしか知りません。その話によると、JETの教員として来日すると、小学校から高校の生徒に英語を教えると同時に、たくさんの日本文化を体験することができるそうです。彼らが教えることや、それ以外のことでもたくさんの冒険をしているのをよく見たり聞いたりしていて、とても楽しそうだと思いました。日本に来てそのような経験がしたい人にとってはいい選択肢だと思います。

修士課程や研究については、これは私の意見ですが、どのような研究をしに来るかによって変わると思います。他にも同じ奨学金でこの大学へ、修士号やそれより上の学位取得のために来ている学生を知っていますが、彼らの分野は私のとは異なります。例えば言語学習や、廃棄物管理、地質学などです。私の個人的な意見として、私と同じような分野、例えば医学分野や自然科学を研究しようとしている学生は、学業が最優先であることを意識すること強く勧めます。例えば私の場合、最初に期待していたほど多くの日本文化を経験できていないものの、そのうちのいくつかは経験することができます。なので、日本に来て、日本の文化を体験したいと思っていても、学生である限り学業が最優先であることは理解しておく必要があります。自分の研究分野における自分の立ち位置や、必要な作業量を知ることで、将来的に日本文化の探求にどのくらいの時間を割り当てられるかなどを知ることが出来ます。このような人は、自分の研究分野について適切に調査をし、出来るだけ多くの人と話し、質問をし、大学についてもどのような選択肢があるかも調べ、それらを元に適切な判断をするべきです。


Q9.短期プログラムに参加したい学生へのメッセージはありますか?

全員参加するべきです。私自身もう一度参加できるのであればしたいです。


Q10.プログラム期間中、一番楽しかったのは何ですか?

たくさんあって選べません。プログラムで出会った人たちはとても愉快でした。APICで招待された学生が同じホテルに泊まったのは非常に楽しかったです。

(APIC和訳)


※1 「太平洋・カリブ学生招待計画」とは、太平洋島嶼国及びカリブ諸国から大学生を日本へ招待し、約1カ月の滞在中、上智大学が主催する短期プログラム January Session in Japanese Studies に参加する計画。上智大学で開講される日本の文化、歴史、社会、経済や日本語に関する科目を受講するほか、日本の学生との交流や、国際協力、観光、教育関連施設への視察などを行い、日本について学際的かつ実践的に学びを深める。

※2 新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年度及び2021年度の同プログラムはオンラインでの実施に変更となった。

※3 Japan Exchange and Teaching Programmeの略称であり、外国青年を招致して地方公共団体が、諸外国の若者を地方公務員等として任用し、日本全国の小学校、中学校や高校で外国語やスポーツなどを教えたり、地方公共団体で国際交流のために働いたりする機会を提供する事業。(外務省公式サイトより)

西インド諸島大学
The University of the West Indies (UWI)

西インド諸島の17の国と地域で英語による高等教育を行う大学。3つのメインキャンパス(ジャマイカのモナ校、トリニダード・トバゴのセント・オーガスティン校、バルバドスのケイブヒル校)の他、通信制のオープンキャンパスが各地にあり、英語を公用語とするカリブ諸国における最古にして最大の高等教育機関として、様々な分野に人材を輩出している。

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