一般財団法人 国際協力推進協会
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インタビュー:上智大学 曄道佳明学長

インタビュー:上智大学 曄道佳明学長

上智大学とAPICは、2014年12月に教育連携に係る包括的な協定(MoU)を提携するなど、協力関係を強めています。今回は上智大学 曄道佳明新学長に、これから上智大学が目指すもの、さらに、APICとの関係についてインタビューしました。【聞き手:APICインターン生 馬場、武井(上智大学)】


Q1・上智大学の新学長就任にあたり、理想の上智大学像を教えてください。

上智の教育がこれまでの変遷の中で培ってきた上智大学像というのは、非常に先見の明がありグローバル化の時代だからといって変わってくるものではないと考えます。

しかし、近年短期的に見ても先行きが悪い時代になり、このようなグローバル化した状況に対応できる人をどのように育て輩出すべきなのかということは、今の取り組みとして積極的に変わっていかなければならないと思っています。地球上を見ると、ローカルな事情とグローバルな取り組みのアンバランスから生じた問題が多々あります。グローバルな視野とローカルな視点を併せ持って国際社会を俯瞰できる人を育てることが、上智大学全体の教育理念です。

なおかつ基盤にあるのはやはりキリスト教ヒューマニズムという人間教育であり、「他者のために、他者とともに」という精神です。まさに今、そういった上智大学の精神を持ったソフィアンが社会で活躍する本当にうってつけの時代になっていると思います。豊かな人間性を備え、グローバルな視野を持ちつつローカルな視点にも心配りができる人たちを輩出することが上智大学像だと思います。

そして、上智大学の卒業生には、常に他者とともに自分はあるのだという意識を持って、例えビジネスの世界であっても社会への還元や共生社会の実現を考慮した事業展開を考えてもらいたいと思います。


Q2・地球規模の視点から地域を捉えるという「グローカル」の概念を持った人を育てるための具体的なプロジェクトや取り組みを教えてください。

例えば授業で言えば豊田通商やアフリカ開発銀行との連携講座の「アフリカにおける開発援助とビジネス展開」があります。国際協力が行われると支援をする立場に立つというのが一般的ですが、ただ寄付をするのではなく、現地が独り立ちできるような仕組みを積極的に創っていかなければなりません。アフリカ開発銀行はグローバルな立場からローカルな地域への投資を促す仕組みを担い、豊田通商は現地でビジネスを展開することにより現地の人たちの雇用を創出する立場にあるわけです。それらがどのように組み合わせられて、グローバルな視野からのローカルな経済の活性化が実際に行われるようになるのかということを学べる科目です。

また、上智大学のプログラムはもちろん一つ一つでも有意義ですが、トータルで考えてもらうように設計されています。例えば、「国連集中研修プログラム」のように世界レベルの政策決定機関について学ぶ研修がある一方で、ベナンでの「アフリカに学ぶ」のように我々が支援をしなければということを想起する地域に行くスタディーツアーがあります。私はこれらを両方経験してほしいと思っています。なぜなら、現地の状況や現地の人たちのニーズと、国際機関としてトップレベルで政策が議論される現場の両方を見ることで、この政策はいつになれば現地の人たちに届くのかということや、ここで打ち出された謳い文句は本当にそこの人々にとって有効であるのかということを考えられるようになります。このように違う側面を持ったプログラムをトータルに考えてデザインすることが、今、上智大学が重点的に取り組んでいることです。


Q3・曄道学長が考えるグローバル人材とはどんな人材ですか。

よく言われるグローバル人材の定義は、語学やコミュニケーションの能力があり、異文化や他宗教などの多様性を認め合うことができる人だと思います。

しかしそれらは素養であり、上智大学の学生にはぜひグローバル社会を展望する力と自分自身を展望する力を同居させるという次なるステップに移ってもらいたいと考えます。短期的にも見通しが悪い時代だからこそ、今展望しなければという気概を持つことがこれからのグローバル人材にとても必要なキーワードだと思っています。ですから上智大学の教育は、どのように展望する力を身につけられるかということを意識しているのです。

例えば一般的に途上国支援というと、先進国と同じ状態を実現できるようにあらゆる社会制度や技術の導入が行われているのが現状です。しかし途上国にも将来があるわけですし、本当に今の欧米や日本の状態になって良いのかという視点が抜けています。つまり物事を展望するというのは他者のケースに置き換えて考えるということです。そしてその展望する力というのは、自分自身を展望する力でもあります。進化し続ける時代を見据えて、どのようなスキルや論理、あるいは知識を大学4年間で身に付ける必要があるのか、それは本当に自身が社会の中枢になったときの備えになるのかを分析し考えることが求められます。


Q4・グローバル・インターンシップ制度を創設されましたが、学部学科の学びとの関係についてどのようにお考えですか。

学生にとって学部学科のカリキュラムを受けて学位を取ることが大学で一番重要ですが、これには2つの側面があります。1つは専門性を身に付けるということで、学生が将来社会に出て人と議論する時に、お互いに何をバックグラウンドに話しているのかという信頼関係につながります。もう1つはものを考えるプロセスを身に付けるということで、それぞれの専門的な立場から物事を創造的に解決するために踏むべき手順がわかるようになります。そしてそれらを実社会で発揮する場がインターンシップです。上智大学の場合はとりわけ、3週間あるいは4週間のインターンシップを通して、実際の現場を見てグローバル展開とはいったいどのようなものかを知ってほしいと考えています。例えばメディアならば、いったいグローバルな情報がどのように日本社会に届いているのかを知ってもらいたいですし、プロフェッショナルな領域に身を置き、実際に社会人と業務をこなすことで、今まで学生が学ぶというプロセスで得た経験を発揮してほしいと願っています。


Q5・ご自身の経験を踏まえて、理系学生に期待する国際協力について教えてください。

国際協力において技術協力は非常に大きい役割を果たすので、理系学生には技術協力と将来的な意味での人材育成に貢献することを期待しています。

私自身は、理系の学生がモノ作りや製造業に携わるのは王道でもちろん良いとは思うのですが、上智大学の学生であれば、ぜひ国際協力の分野で技術的な知識や解決力、分析力を積極的に発揮してほしいと思います。例えば私が専門にする鉄道に関しては、発展途上の地域に鉄道を敷くということは非常に大きなインパクトがあります。駅ができて町ができると、人が集まってきて雇用問題が解決されるというような仕組みができますが、理論的な根拠がないとどこに駅を配置したら良いかは分かりません。そのような点において理系ならではのモノの考え方が発揮されるのです。そのため、理系学生には自分の持っている技術を現地の人にどう提供していくかを考える立場に立ってもらいたいと思っています。


Q6・残すところ3年で2020年東京オリンピック・パラリンピックを迎えますが、上智大学はどのようにこれらと関わっていきたいとお考えですか。

今、上智大学では、「オリンピック・パラリンピック概論」という講義に引き続き、来年も2科目が立ち上がります。いわゆる教養教育では、オリンピック・パラリンピックについて知る、あるいはそれらを通して社会の共生という課題やユニバーサルマナーについて知るというプログラムが展開されます。そして上智大学としては、オリンピック・パラリンピックを盛り上げるという立場とともに、理想とする共生社会の実現に向けてそれらがどのような契機や経験、体験の材料になるかという視点に立っています。なぜなら、我々が考える様な平和で豊かな共生社会をつくるための一部としてオリンピック・パラリンピックがあるという位置づけが上智大学の物の考え方だからです。そして共生社会という観点では、「他者のために、他者とともに」という上智大学の理念につながります。オリンピック・パラリンピックは全世界の人種、宗教、民族を超えた祭典ですから、その中でどのような共生社会を作っていくかを考えるにはとても良い機会になると感じています。

また、上智大学ではかなりの数の教員がオリンピック・パラリンピックの研究をしています。パラリンピックの義足の研究をしている人もいますし、競技の他言語翻訳を研究している人もいます。教員や学生にオリンピック・パラリンピックはとても大きな関心事であると思うので、もちろん大学組織としてそれらに貢献することも考えていますが、学生にとって学びの機会となることを重視しています。東京でオリンピック・パラリンピックというのは、もうこの先しばらくないような貴重な機会ですので、単なるスポーツのイベントとしてではなく、スポーツを通して共生社会が実現されることの意義を考える機会にするというのが今の取り組み方です。


Q7・本年度からミクロネシア・エクスポージャーツアー(単位付き)が開設されますが、これに伴うAPICと上智大学の連携の意義を教えてください。

上智大学は学部教育としては珍しく地域研究のレベルで世界の大半を網羅しています。しかし今、APICと連携して関わらせていただいているミクロネシアやカリブ地域は、なかなか今まで大学教育に取り込むことができなかった地域なのです。APICとの連携関係により、これらの地域も教育の題材あるいは研究の対象とすることができ、特に環境について上智大学から発信できるようになったことは本当にありがたいことです。やはり、近いようで遠いという存在が実は一番遠く、おそらく他の大学ではなかなか真似できないプログラムだと思います。ミクロネシアやカリブ地域に目が行き届く、あるいはそのような地域の学生と交流できるというのは本当に貴重ですから、二国間の学生交流をAPICとご相談しながら強化していきたいと考えています。


Q8・ミクロネシア・エクスポージャーツアー(単位付き)に参加する学生は上智大学の代表として派遣されますが、特にどのようなところを見て来てほしいとお考えですか。

少々月並みで稚拙に聞こえるかも知れませんが、私はミクロネシアの学生たちの夢を聞いてきてほしいと思います。学生交流という観点ですと、学生が東南アジアに行くことは簡単にでき、現地の現状も知っているかと思いますが、ミクロネシアの現状はほとんどの人が知らないでしょう。ましてや、実際にそこに人々が暮らし、我々と同じように生活して夢を持った若者がいるということはなかなか想起できないことです。例えば外務省に入りたいという人がいても、漁業をもっと盛り上げたいという人がいても、どちらが良いということは決してなく、同じ重みがあります。同じ時代で同じ地球上に今生きている人たちと、自分たちの夢との間にどのような質的な違いがあるのか、またそれはなぜなのかを実感してもらいたいのです。そして彼らの夢に加えて、彼らの世界に対する危惧を聞いてきてほしいです。例えば彼らなら環境問題や海水位の上昇に対して非常に敏感な反応があるかもしれません。ですから、ミクロネシア・エクスポージャーツアーの派遣学生には、これからのグローバル社会に対してどのような不安材料を感じているのかということを現地の学生たちと議論してきてほしいと思っています。

インタビュー:上智大学 曄道佳明学長

【略歴】
1994年 東京大学生産技術研究所・助手
1998年 上智大学理工学部機械工学科・助教授
2004年 上智大学理工学部機械工学科・教授
2008年 上智大学理工学部機能創造理工学科・教授 (学部改組)
2004年 上智大学学生部長補佐
2005年 上智大学学生局学生センター長
2006年 上智大学ボランティア・ビューロー担当主任
2008年 上智大学理工学部機能創造理工学科長
2010年 上智大学学事局入学センター長
2011年 上智大学学務担当副学長
2014年 学校法人上智学院グローバル化推進担当理事補佐
2015年 上智大学国際協力人材育成センター長
2017年 上智大学長

(※ 2017年7月時点)

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